キャリパーブレーキ

キャリパーブレーキ：自転車の制動を支える歴史ある技術

キャリパーブレーキは、自転車用ブレーキの主要な形式の一つです。ロードバイクやシティサイクルに多く用いられ、特にシティサイクルでは前輪ブレーキとして頻繁に採用されています。その歴史は古く、1900年代初頭、安全型[[自転車]]の前輪ブレーキとして開発されたのが始まりです。現在でも広く普及しており、自転車用ブレーキの中でも最も長い歴史を持つタイプと言えるでしょう。

キャリパーブレーキの名称と基本構造

「キャリパー」の名は、機械工作用の計測器である「キャリパース」の形状に類似していることからきています。特に「外パス」と呼ばれるタイプのキャリパースとの類似性が顕著です。

キャリパーブレーキの基本構造は、左右独立したブレーキアーチが軸に固定され、アームを引き絞ることでブレーキシューの間隔を狭め、リムを挟んで制動力を発生させる仕組みです。アームを引き絞るには主にブレーキワイヤーが使われ、特に主流のサイドプル方式では、余計な部品を必要としない簡潔さが特徴です。このワイヤー式ブレーキとの親和性の高さから、キャリパーブレーキの普及はワイヤー式ブレーキの普及と密接に関係しています。

前輪用と後輪用では、取り付け位置やボルトの長さ、ブレーキシューの向きなどが若干異なります。前輪用はフロントフォークのフォーククラウンに、後輪用はシートステイのブリッジに固定されますが、それぞれ異なる厚みを持つため、ボルトの長さも異なってきます。また、車輪の回転方向に対してブレーキ本体の取り付け方向が逆になるのが一般的です。そのため、ブレーキシューに方向性がある場合は、前輪と後輪で取り付け方向が逆になります。

キャリパーブレーキの種類

キャリパーブレーキは構造によって、大きくサイドプルとセンタープルの2種類に分けられます。サイドプルはさらに、シングルピボットとダブルピボットに分類されます。それぞれのタイプについて、詳細を見ていきましょう。

サイドプル・キャリパーブレーキ

サイドプルブレーキは、ワイヤーがブレーキアーチの側面から引かれるタイプです。

シングルピボット

シングルピボットは、サイドプルの最も基本的な形態です。1970～80年代にはロードレースでも広く使われていましたが、現在はシティサイクルの前輪ブレーキなどに多く用いられています。安価な自転車に多く採用されていることから、安価なブレーキというイメージが強いですが、軽量であるため、高級なレース用ブレーキとして使われている例もあります。

シングルピボットは制動力がダブルピボットに比べて弱く、左右のブレーキアーチとブレーキ本体が一本のボルトで固定されているため、動作バランスに難点があります。安価な製品では片効きが起こりやすい傾向がありますが、高品質な製品であれば適切な整備で解消可能です。

ダブルピボット

ダブルピボット（デュアルピボット）は、左右のブレーキアーチの作動軸が独立しているのが特徴です。これにより、てこの原理が有効に働き、軽い操作力で十分な制動力を得ることができます。また、シングルピボットに比べて片効きが起こりにくいのも利点です。現在、スポーツサイクルで「キャリパーブレーキ」といえば、このダブルピボットを指すことが多いです。ロードレースはもちろん、近年では高品質なシティサイクルや電動アシスト自転車にも採用されています。

左引きと右引き

サイドプルブレーキには、ワイヤーが接続されるアームの位置によって「左引き」と「右引き」があります。ロードバイクでは左引き、シティサイクルでは右引きが多い傾向がありますが、これは地域差によるブレーキ操作方法の違いに由来します。

センタープル・キャリパーブレーキ

センタープルブレーキは、1950～60年代にロードレースで広く使われていました。日本では1980年代までスポルティーフなどにも使われていましたが、現在はあまり見かけなくなりました。左右のブレーキアーチの中央をワイヤーで引っ張る方式で、現代のマウンテンバイク用ブレーキであるUブレーキの先駆けと言えるでしょう。

キャリパーブレーキのサイズ

キャリパーブレーキは、キャリパーアームの長さ（リーチ）によってサイズが異なります。ロードバイク用はリーチが短く（ショートリーチ）、剛性を高めるために設計されています。太いタイヤには干渉するため注意が必要です。一方、シティサイクルなど太いタイヤとの組み合わせや、泥よけ装着を考慮したロングリーチやミディアムリーチの製品もあります。リーチが長いものは、幅も広い傾向があります。

まとめ

キャリパーブレーキは、長い歴史を持ち、現在でも様々な自転車で広く使われている信頼性の高いブレーキです。シングルピボットとダブルピボット、センタープルといった種類があり、それぞれに特徴があります。自転車を選ぶ際には、用途やタイヤの太さなどに合わせて、適切なリーチのキャリパーブレーキを選択することが重要です。

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