安全型自転車

安全型自転車

安全型自転車は、イギリスの発明家ジョン・ケンプ・スターレーによって1885年に考案されたもので、現代の自転車の原点とされています。彼はウィリアム・サットンと共に「スターレー・アンド・サットン社」を設立し、その社名で初の商業モデル「ローバー安全型自転車」を発表しました。この自転車は発売早々から高い評価を得て、イギリス全土はもちろんのこと、ヨーロッパや世界中に広まっていきました。

特徴

安全型自転車の最も顕著な特徴は、そのデザインです。前後にほぼ同じサイズの車輪を配置し、乗り手はその中央に座る構造になっています。このデザインは、従来のドライジーネやベロシペードに似ていますが、前輪が後ろに傾斜したフロントフォークによって保持され、ハンドルは乗り手の手前に配置されています。後輪はチェーン駆動で、乗り手の真下にあるクランクと連結しているため、低重心かつ優れた操作性が実現されています。この設計によって、従来のペニー・ファージング型自転車の欠点である高重心による不安定性が克服されました。また、ハンドルとペダルの位置が人間の身体に適した形状であることにより、非常に操作しやすく安全に乗ることができるようになりました。

ただし、安全型自転車は当初、鉄製のホイールに固形ゴムタイヤを装備していました。このため、道路の凹凸による衝撃を受けやすく、乗り心地はあまり良くありませんでした。しかし、1888年にジョン・ボイド・ダンロップが空気入りのゴムタイヤを発明したことで、乗り心地や速度が大幅に改善され、安全型自転車の性能が向上しました。

ブレーキについては、初期には靴べらのような鉄の板で制動するスプーン型ブレーキが採用されていましたが、後にロッド式リムブレーキに進化しました。この時期のブレーキは前輪のみに装備されていましたが、後輪の駆動は固定ギアであったため、ペダルを回すことで減速することも可能でした。

フレームとデザイン

フレームの設計に関しては多くの試行錯誤がありました。さまざまなフレーム形状が試作され、その中には現代でも人気のあるダースレイ・ペデルセン自転車のようなものもありました。しかし、最終的に成功したのはダイヤモンドフレームであり、これは現在でも自転車フレームの基本的なデザインとして利用されています。

影響

安全型自転車の登場は、自転車の利用者の幅を広げました。従来のペニー・ファージング型は速度追求の製品であり、一般的には中流階級の男性にしか受け入れられませんでした。しかし、安全型自転車はすべての人々に開かれたものであり、男女を問わず、運動神経に関係なく多くの人々が楽しむことができるようになりました。その結果、労働者階級にも自転車が普及し、需要が急増。自転車の大量生産と価格の引き下げを促進しました。

また、安全型自転車はスポーツ機材としての重要性も高めました。ダイヤモンドフレームの確立により、乗り方や走行姿勢が考慮されるようになり、セミドロップやドロップハンドルといった新しい設計が生まれました。その後、1910年前後にはロードバイクの原形が完成し、安全型自転車は実用性とスポーツ性ともに二分化されていきました。フリーホイールや変速機が登場することで、ロードレーサーへと進化を遂げました。

関連項目

• - ホイペット: 1885年にリンリーアンドブリッグスによって製造された安全型自転車で、外装変速機や衝撃吸収フレームが搭載されていました。

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