センタープルブレーキ

センタープルブレーキ：歴史と進化

自転車のブレーキシステムにおいて、センタープルブレーキは重要な役割を果たしてきたリムブレーキの一種です。かつてロードレーサーやスポルティーフで広く利用されていましたが、現在ではBMXにおけるUブレーキがその主流となっています。本稿では、センタープルブレーキの構造、歴史、そしてBMXにおけるUブレーキへの発展について詳しく解説します。

センタープルブレーキの基本構造

センタープルブレーキは、フロントフォークやシートステイ、チェーンステイに直接、またはアダプターを介して取り付けられます。Vブレーキと似た台座を使用しますが、リムとの位置関係が異なるため互換性はありません。

ブレーキ本体は、2本の逆U字型アームが中央のボルトで固定された構造です。このボルトが支点となり、てこの原理でアームが動きます。各アーム上端にはアーチワイヤーが接続され、中央部では「ちどり」と呼ばれる部品を介してメインワイヤーと連結。ブレーキレバー操作でメインワイヤーが引っ張られると、ちどり、アーチワイヤー、ブレーキアームが連動し、ブレーキシューがリムに押し付けられて制動力が発生します。BMXの前輪ブレーキでは、アーチワイヤーとちどりを省略し、横方向から直接アームを引き絞る構造が用いられることもあります。

伝統的なセンタープルブレーキ

1950～60年代後半、ロードレーサーの世界ではセンタープルブレーキが主流でした。サイドプルブレーキに比べ、軽い操作力で十分な制動力を得られる点が評価されました。Mafac（フランス）、Weinmann（スイス）、Universal（イタリア）などが主要メーカーとして知られています。

しかし、Campagnolo社がシングルピボット・サイドプルブレーキを開発・販売開始すると状況は変化しました。高性能なサイドプルブレーキが普及し、センタープルブレーキはロードレーサーの分野では徐々に衰退していきました。スポルティーフなどでは1980年代後半まで使用されていましたが、マウンテンバイクやロードバイクの流行とともに、伝統的なツーリング車自体が衰退したため、センタープルブレーキもその運命を辿ることになりました。

高級ロードレーサーやスポルティーフでは、フロントフォークやシートステイに直接台座をろう付けする「直付け」が用いられることもありましたが、量産車ではアダプターを使用するのが一般的でした。これは、センタープルブレーキの台座規格が統一されておらず、メーカーやモデルによって形状や位置が異なっていたこと、そして左右のアームが接近して取り付けられる構造のため、高い精度が求められたことなどが原因です。

Uブレーキ

Uブレーキは、その名の通り左右のアームが逆U字形を形成するブレーキです。元々はシマノ社の商標でしたが、現在では一般名称として広く使われています。

マウンテンバイク用Uブレーキ

1980年代後半、マウンテンバイクのスローピングフレーム化に伴い、従来のカンチブレーキがライダーの足に接触するという問題が発生しました。この解決策として開発されたのがUブレーキでしたが、泥や雪が詰まりやすいという欠点があり、マウンテンバイク分野ではすぐに廃れてしまいました。改良型のカンチブレーキであるロープロファイル型が登場したことも、Uブレーキの衰退を加速させました。また、Vブレーキが普及していたカンチブレーキと同じ台座位置を採用していたのに対し、Uブレーキは専用の台座が必要だったことも、失敗の一因と考えられます。

BMX用Uブレーキ

マウンテンバイク分野では失敗に終わったUブレーキですが、1990年代に流行したフリースタイルBMXで新たな活路を見つけました。現在ではBMXで最も一般的なブレーキとなっています。突起物がなく、激しい動作における安全性を確保できる点が、BMXでの採用理由です。後輪用Uブレーキは、フレーム構造に守られるようにシートステイ下側またはチェーンステイ上側に取り付けられます。

フリースタイルBMXでは、微妙な速度調整よりも、瞬時に車輪を固定する能力が求められます。そのため、ゴムのような質感を持つブレーキシューが使用され、鏡面メッキのCPリムとの組み合わせが好まれます。しかし、この組み合わせは、接触面が汚れたり濡れたりすると制動力が著しく低下するという欠点があります。

BMX用前輪ブレーキは、ハンドル操作の邪魔にならないよう、アーチワイヤーとちどりを省略し、横方向から直接ワイヤーを接続する方式が採用されています。ブレーキワイヤーはステム、ヘッドチューブ、フロントフォークを通り、ブレーキ本体に接続されます。これは、ジャイロ機構と併用されることが多く、ワイヤーの絡まりを防止する工夫です。後輪ブレーキでも、ジャイロを使用する場合はアーチワイヤーとちどりを省略した構造が用いられることがあります。

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