キャンディド・レコード

キャンディド・レコード：ジャズの真髄を捉えた名門レーベル

キャンディド・レコードは、1960年にニューヨークで誕生した、歴史あるジャズ・レコード・レーベルです。創設当初はケイデンス・レコードの子会社として、アーチー・ブレイヤーによって設立されました。レーベルの方向性を決定づけたのは、ジャズ評論家であり公民権運動家でもあったナット・ヘントフです。彼がA&Rディレクターを務めたことで、キャンディドは当時のジャズシーンを代表するアーティストたちの貴重な音源を世に送り出すことになりました。

初期のキャンディド・レコード

ナット・ヘントフは、単に音楽を録音するだけでなく、時代精神を捉え、社会的なメッセージを発信するアーティストを積極的に起用しました。アビー・リンカーンのような歌手は、公民権運動と深く結びついた歌を歌い、聴衆に強い印象を与えました。また、ドン・エリス、ブッカー・リトル、チャールズ・ミンガス、セシル・テイラーといった、革新的な音楽家たちの作品もリリースし、キャンディドは単なるジャズ・レーベル以上の存在感を示すようになりました。

アルバムジャケットのデザインも、キャンディドの特徴の一つです。フランク・ガウナが手がけたジャケットは、シンプルながらも洗練されたデザインで、音楽の内容を視覚的に表現していました。これらのジャケットは、レコード店で一際目を引き、キャンディドのブランドイメージを確立する上で大きな役割を果たしました。

一時閉鎖と再興

しかし、1964年、キャンディドは経営難に陥り、親会社であるケイデンス・レコードが閉鎖されることになります。アーチー・ブライヤーは、ケイデンスの全カタログを歌手のアンディ・ウィリアムスに売却しました。その後、ウィリアムスは自身のレーベルであるバーナビー・レーベルからキャンディドの音源を再発したり、海外のレコード会社にライセンスを供与したりしました。

1989年、キャンディドの録音はブラック・ライオン・レコードに買収され、再び活気を取り戻します。ブラック・ライオンは、過去の貴重な音源をCDで再発するとともに、新たなアーティストのレコーディングも積極的に行いました。こうして、キャンディドは再びジャズシーンにその名を轟かせることになったのです。

キャンディド・レコードUK

ブラック・ライオン傘下となったキャンディドは、イギリスを拠点に「キャンディド・レコードUK」として新たな展開を見せます。グレッグ・エイベート、ケニー・バロン、ルイス・ボニーラ、アート・ホーディス、リー・コニッツ、デイヴ・リーブマン、ショーティ・ロジャース、バド・シャンク、モンゴ・サンタマリア、シャーリー・スコットといった、ベテランから若手まで幅広いアーティストの作品をリリースし、その音楽性はさらに多様化しました。

キャンディド・レコードは、設立当初から一貫して、創造性と革新性を追求する姿勢を貫いてきました。その結果、数多くの名盤が生まれ、ジャズの歴史に深く刻まれることとなりました。一時閉鎖という苦難を乗り越え、再び輝きを取り戻したキャンディド・レコード。これからも、ジャズの未来を担うアーティストを支援し、素晴らしい音楽を世界に届けてくれることでしょう。

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