キャンディ・レーベル

キャンディーズの9作目のオリジナルアルバム『キャンディ・レーベル』は、1977年9月1日に発表されました。このアルバムは、同年7月17日、全国ツアー初日の日比谷野外音楽堂での公演中に突如行われた、メンバーの伊藤蘭による「普通の女の子に戻りたい」という解散宣言からおよそ1ヶ月半という、グループにとって非常に重要な時期にリリースされました。タイトルの『キャンディ・レーベル』は、LP帯に記された「全員注目! キャンディ・レーベル」というコピーにも象徴されています。

本作は、当時としては珍しい変則的な構成をとっています。通常の30cmLP盤である「本編」に加え、4曲を収めた17cmの「コンパクト盤」がセットになっていました。ジャケットは見開き式で、厚紙で作られた帯が上から被せられる形状になっており、その裏面にはコンパクト盤を収納するためのスリーブが一体化していました。このユニークな装丁も、当時のファンにとって印象深いものとなりました。CD化される際は、これら全ての楽曲が1枚にまとめられて収録されています。ただし、アポロン音楽工業から発売された音楽テープ版には、コンパクト盤の楽曲は含まれていませんでした。

本編のLP盤は、A面にオリジナルの新曲5曲と洋楽カバー1曲を収録しています。この中には、アルバムリリースの直前にヒットした14thシングル「暑中お見舞い申し上げます」とそのB面曲「オレンジの海」も含まれています。洋楽カバーとして収められた「ふたりのラヴ・ソング -All You Get from Love Is a Love Song-」は、カーペンターズのカバーとしても知られるスティーヴ・イートンの楽曲で、後に次作シングル「アン・ドゥ・トロワ」のB面としてリカットされました。B面には、キャンディーズと同じ所属事務所の後輩にあたる、双子デュオの先輩アーティスト、ザ・ピーナッツの代表曲から6曲が選ばれてカバーされています。「ふりむかないで」「恋のバカンス」「恋のフーガ」など、日本のポップス史に刻まれる名曲をキャンディーズならではの歌唱で楽しむことができます。

付属のコンパクト盤には、本編とは趣の異なるオリジナル曲が3曲と、洋楽カバーが1曲収録されています。洋楽カバーである「シュガー・キャンディ・キッス」は、Mac & Katie Kissoonの楽曲の日本語詞カバーです。これらのコンパクト盤の楽曲は、文字通りキャンディーズの「Candy」という名前やイメージを連想させるようなタイトルが付けられています。

後年の再発盤では、本作はさらに充実した内容で提供されました。特に2008年9月3日にリリースされたCD-BOX『キャンディーズ・タイムカプセル』に収められた紙ジャケット盤は、オリジナルLPとコンパクト盤の収録曲全てに加え、ボーナス・トラックが多数追加されています。追加されたのは、アルバム未収録であった15thシングル「アン・ドゥ・トロワ」とそのB面曲「ふたりのラヴ・ソング」のシングル・ミックス・ヴァージョン、さらに解散から20年の時を経て発見されたという未発表音源「暑中お見舞い申し上げます Part 2」（ヒットシングル「暑中お見舞い申し上げます」とは異なるメロディーを持つ別作曲バージョン）、そして複数のオリジナル・カラオケ音源などです。これらのボーナス・トラックの追加により、本作は当時の楽曲だけでなく、後年に発見された貴重な音源まで含めた、より包括的なコレクションとしての価値を持つようになりました。

『キャンディ・レーベル』は、解散という大きな転換期を迎える直前に発表された作品であり、ヒットシングルを含む当時のキャンディーズの活動を示すオリジナル曲、日本のポップスの歴史を彩るザ・ピーナッツの名曲カバー、そして洋楽カバーと、バラエティ豊かな内容を収めています。特に変則的な構成や、後年に発掘された未発表音源など、資料的価値も高い一枚と言えるでしょう。

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