キュー

キュー (cue / kew / Q / Que / queue)

「キュー（cue）」という言葉は、何らかの出来事の開始や、次にとるべき行動を示すための合図や信号を指す、多義的な言葉です。

語源と基本的な意味

この言葉の語源は英語の「cue」で、「手がかり」や「合図」といった意味を持っています。さらにその起源を遡ると、ラテン語で「いつ？」を意味する「quando」の頭文字である「q」に由来するとされています。

各分野における「キュー」

演劇・音楽・テレビなど

演劇、音楽演奏、テレビ番組の収録といった様々なパフォーマンスの現場では、演者や演奏家といった実行者に対して、演技の開始、演奏の開始・停止、セリフを言うタイミングなどを指示するために「キュー」が出されます。これは「キューを出す」という形で使われます。

特にテレビスタジオのような現場では、本番中の音声に合図の声が乗ってしまうことを避けるため、独特の方法がとられることがあります。例えば、番組開始までのカウントダウンでは、「10秒前です！」と少し長めに声を出した後、「8、7、6…」と短く続けますが、本番でマイクがオンになる直前の3秒前からは、声ではなく手の合図のみで残り時間を示す、といった工夫が行われています。

音楽の楽譜

音楽の楽譜上にも「キュー」という言葉に関連する概念が存在します。これは、長い休符の後に自分の演奏が始まるタイミングを見失わないように、他のパートの重要な旋律を小さな音符で記したものです。また、合奏で特定のパートが不在の場合に、そのパートの代わりに演奏するために楽譜に記された小音符も「キュー」と呼ばれることがあります。

コンピュータサイエンス

コンピュータサイエンスの分野では、「キュー（queue）」は「待ち行列」を意味します。これは、処理を待っているデータやジョブが一時的に保持される構造を抽象化したものです。プリンターに送られた印刷ジョブや、ネットワーク経由で到着したデータなどが、処理待ちのキューに格納されます。このキューの最も一般的な形式は、最初に入力されたものが最初に処理されるという原則（先入れ先出し、FIFO：First-In, First-Out）に基づいています。

ビリヤード

ビリヤードにおいて、手玉を突いてゲームを進めるために使用する棒も「キュー」と呼ばれます。この棒の正式名称は「キュー・スティック」ですが、通常は単にキューと略されます。

その他の「キュー」

上記以外にも、「キュー」あるいはそれに類する発音や表記（kew, Q, Que, CUE, queueなど）を持つ様々な事物が存在します。これらは上記で説明した「合図」や「待ち行列」といった意味とは直接関連しない、固有名詞として使用されています。

主な例として、以下のようなものが挙げられます。

地名: イギリスのロンドンにある地区（キューガーデンで知られる）、オーストラリアのビクトリア州やニューサウスウェールズ州にある地名。
エンターテインメント: スマートフォン向け声優育成ゲーム『CUE!』、日本の芸能事務所「CREATIVE OFFICE CUE」、日本の音楽グループYMOの楽曲『キュー』、9nineや高野寛のアルバム名、下北沢にあるライブハウス「CLUB Que」。
出版・メディア: 過去にニューヨークで刊行されていた週刊誌『キュー』、イースト・プレスの漫画雑誌『COMIC CUE』。
技術: トヨタ自動車が開発したAIバスケットボールロボット『CUE』。
企業: DMM.com傘下のアニメ制作会社「CUE」。
文字: ラテン文字の「Q」。

このように、「キュー」という言葉は、その語源である「合図」や「手がかり」という意味から派生した多様な専門分野での用法に加え、数多くの固有名詞としても用いられており、文脈によってその指す対象が大きく異なります。

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