キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観

キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観：カリブ海の歴史を刻む場所

「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」は、キューバの世界遺産のひとつであり、サンティアーゴ・デ・クーバ州とグァンタナモ州にまたがる広大な土地に位置しています。この地には、171ものコーヒー・プランテーションの遺跡が点在し、カリブ海のプランテーションの歴史を今に伝える貴重な場所です。

ハイチ革命とコーヒー栽培の伝播

18世紀、カリブ海地域では黒人奴隷を使ったプランテーションが盛んに行われていました。特にフランス領サン＝ドマング（現在のハイチ）では大規模なプランテーションが展開されていました。しかし、ハイチ革命が勃発し、サン＝ドマングがハイチとして独立を果たすと、多くの白人たちは黒人奴隷を連れて新たなプランテーション用地を求めて移動を始めました。

その際、当時スペイン領であったキューバに渡る人々が現れました。キューバでは、主にサトウキビ・プランテーションが展開されましたが、南東部のシエラ・マエストラ山地の麓では、コーヒー・プランテーションの導入が試みられました。

シエラ・マエストラの挑戦

シエラ・マエストラ一帯は、ハイチと似た気候条件を持つものの、鬱蒼とした森林に覆われており、開墾は困難を極めました。しかし、開拓者たちは困難を乗り越え、次々とプランテーションを建設していきました。19世紀には多くのコーヒー農園が作られましたが、ハイチから伝わった伝統的な手法に頼る経営は、ブラジルなど南米諸国で始まった新しいコーヒー栽培技術との競争に苦戦し、キューバのコーヒー・プランテーションは徐々に衰退していきました。

登録対象地域

この世界遺産には、以下の地域が含まれています。

ラ・グラン・ピエドラ (La Gran Piedra, ID 1008-001) - 25200 ha
エル・コブレ (El Cobre, ID 1008-002) - 1300 ha
ドス・パルマス・コントラマエストレ (Dos Palmas Contramaestre, ID 1008-003) - 19500 ha
ヤテラス (Yateras, ID 1008-004) - 10600 ha
エル・サルバドル (El Salvador, ID 1008-005) - 8000 ha
ニセト・ペレス (Niceto Pérez, ID 1008-006) - 8700 ha
グアンタナモ (Guantánamo, ID 1008-007) - 8100 ha

これらの地域は、それぞれ異なる歴史と特徴を持ち、コーヒー栽培の歴史を物語る貴重な証拠となっています。

世界遺産としての評価

「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」は、森林を開墾して作り上げられた文化的景観であり、その苦闘の歴史が評価され世界遺産に登録されました。

登録基準としては、以下の点が挙げられています。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
* (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

これらの基準は、この地がカリブ海のプランテーションの歴史を伝える上で、かけがえのない存在であることを示しています。

「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」は、単なるコーヒー農園の遺跡ではなく、カリブ海の歴史、文化、そして人々の苦闘の物語を伝える、生きた遺産なのです。

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