サン＝ドマング

サン＝ドマングの歴史

サン＝ドマング（Saint-Domingue）は、1659年から1804年までカリブ海のイスパニョーラ島西部に存在したフランスの植民地でした。この地域は現在のハイチ共和国にあたります。サン＝ドマングは砂糖とコーヒーの生産で著名で、フランスの植民地の中でも特に利益を上げていました。

植民地の成立

サン＝ドマングという名称は、スペインがイスパニョーラ島に付けた「サント・ドミンゴ」に由来します。16世紀初頭、スペインはこの島全土を支配し、先住民や奴隷による労働で金鉱を開発しました。しかし、南アメリカやメキシコにより豊かな資源が発見されると、イスパニョーラへの関心が薄れていきました。海賊の襲撃が頻発したため、1606年には植民者が島の東側へ移転を命じられました。

フランス人やイングランド人は、1625年にトルトゥーガ島に拠点を築き、海賊活動を通じて一時的に栄えました。1659年、フランス王ルイ14世はトルトゥーガ島を正式に植民地とし、1664年にはフランス西インド会社がサン＝ドマングの経営を引き継ぐことになりました。1697年のライスワイク条約により、スペインは島の西側三分の一をフランスに譲渡しました。これにより、サン＝ドマングが正式にフランスの植民地となり、首都は1770年にポルトープランスに移転しました。

繁栄と奴隷制

サン＝ドマングの経済は、フランス植民者による砂糖やコーヒーのプランテーションに支えられていました。アフリカから導入された奴隷たちが労働力となり、彼らの厳しい状況から逃れようとする者も多くいました。逃亡奴隷たちは、山岳部に集まり、先住民であるタイノ族と混血しながら生息していました。また、サン＝ドマングは18世紀において最も裕福な植民地の一つであり、世界の砂糖とコーヒー供給の大部分を占めていました。

その一方で、人権の侵害が横行しており、奴隷に対する厳しい統制が求められることもありました。ルイ14世の時代には「黒人法」が制定され、奴隷たちの権利を制限し、過酷な労働環境が確立されたのです。奴隷たちは厳しい労働や鞭打ちの恐怖にさらされ、彼らが逃げることは許されませんでした。逃亡奴隷は「マルーン」と呼ばれ、しばしば平地にある農園を襲って抵抗しました。

サン＝ドマングには有色人種の自由層も多く、彼らは独自の文化と経済基盤を持ち、その一部は有力な農園主として権力を持っていました。しかし、奴隷制による抑圧と貧富の差が激しい社会の中で、白人支配層と奴隷の間での対立は深刻でした。

フランス革命とハイチ革命

1789年のフランス革命は、サン＝ドマングにも影響を及ぼしました。有色自由人たちが人権を求め、内戦が勃発しました。1791年、北部で黒人奴隷たちが反乱を起こし、ハイチ革命が始まります。この革命は、奴隷たちの自由を求める戦いであり、彼らはブードゥー教の儀式を通じて結集しました。

1794年、フランス革命政府は黒人奴隷たちの解放を宣言しましたが、戦闘は続き、白人植民者と有色人種の間での対立が生じました。トゥーサン・ルーヴェルチュールが指導する反乱軍が台頭し、彼はフランス軍の側に立ちましたが、戦局は流動的でした。最終的に、フランスから派遣されたナポレオン軍がサン＝ドマングに侵攻しましたが、反乱軍はこれに抗し続けました。

ハイチの独立

1804年1月1日、ジャン＝ジャック・デサリーヌが独立を宣言し、国号をハイチに改めました。この結果、サン＝ドマングは滅び、ハイチは黒人とムラートの国となりました。独立後も、有色人と黒人の間の対立が続き、国内は混乱していました。

フランスはハイチ政府に賠償金を請求し、これが長期的な経済的苦難を引き起こしました。このように、サン＝ドマングの歴史は、植民地支配と奴隷制、そして独立への戦いの物語であり、ハイチの文化と社会に深い影響を及ぼしています。

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