キューブのパワー

キューブのパワー：ドクター・フー第七シリーズの隠された脅威

2012年、イギリスで放送されたSFドラマ『ドクター・フー』第7シリーズ第4話「キューブのパワー」（原題: "The Power of Three"）は、多くの視聴者を魅了したエピソードです。本記事では、このエピソードの魅力を様々な角度から深掘りしていきます。

エピソードの概要：静かに忍び寄る脅威

タイムトラベラーである11代目ドクター（マット・スミス）は、コンパニオンのエイミー・ポンド（カレン・ギラン）とローリー・ウィリアムズ（アーサー・ダーヴィル）と共に、地球で奇妙な現象を調査します。それは、一夜にして出現した無数の小型正六面体。一見無害なこれらのキューブは、徐々に人々の生活に影響を与え始め、やがて想像を絶する脅威へと発展していきます。

このエピソードは、エイミーとローリーという、ドクターのコンパニオンたちの視点に焦点を当てています。彼らは、ドクターとの旅を通して、どのように変化し、成長してきたのか。そして、ドクターとの別れが近いことを悟りつつ、彼らの日常と未来への想いが丁寧に描かれています。

物語の背景：様々なインスピレーション

「キューブのパワー」の脚本を手掛けたのは、クリス・チブナル。彼は、MSCナポリの逸話や舞台作品『The Man Who Came to Dinner』からインスピレーションを得て、この物語を創作しました。また、対エイリアン組織UNITも再登場。レスブリッジ・スチュワート准将の娘、ケイト・スチュワート（ジェマ・レッドグレイヴ）がUNITの科学部長として初登場するなど、シリーズの伝統と新たな要素が融合しています。さらに、物理学者ブライアン・コックスや実業家アラン・シュガーといった著名人がカメオ出演している点も見逃せません。

シリーズとの繋がり：過去の物語との邂逅

このエピソードは、これまでの『ドクター・フー』シリーズとの繋がりも深く、様々な伏線が張られています。例えば、ドクターが過去のコンパニオンたちについて語るシーンや、以前のエピソードに登場したアイテム「フィッシュカスタード」の登場など。また、ザイゴンやUNITといったお馴染みの存在も登場し、シリーズファンを喜ばせました。これらの要素は、単なるオマージュではなく、物語に奥行きと深みを与えています。さらに、過去のエピソードでドクターが所有していたロボット犬K-9への言及も含まれ、長年のファンへの粋な計らいが感じられます。

制作秘話：撮影から放送まで

「キューブのパワー」の撮影は、第7シリーズの最後に行われました。これは、ギランとダーヴィルにとって『ドクター・フー』レギュラーとしての最後の撮影となり、感慨深いものだったようです。無数のキューブの小道具は、実物とCGIを組み合わせることで制作され、その精巧な作り込みにも注目が集まりました。ロンドンオリンピック開催の影響で、ロンドン塔での撮影が不可能となったため、カーディフのスタジオで撮影された映像に他の映像を合成するなど、工夫が凝らされた制作の裏側も興味深いものです。

放送と反響：視聴者と批評家の評価

イギリスでの放送時には、高い視聴率を記録しました。批評家の反応も概ね肯定的で、ユーモアと感情的な要素が高く評価されました。特に、エイミーとローリーが中心となった物語展開や、ケイト・スチュワートの登場、そしてドクターとの生活が丁寧に描かれた点は、多くの称賛を得ました。一方で、物語の解決策については、物足りないという意見もありました。日本でも、Huluでの配信によって多くの視聴者に楽しまれました。

まとめ：静かな侵略と深い人間ドラマ

「キューブのパワー」は、大規模な侵略を描写しつつも、人間ドラマに重きを置いたエピソードです。ドクターとコンパニオンたちの絆、そしてコンパニオンたちの成長と別れ。これらの要素が、SF的な要素と見事に融合し、視聴者に深い感動を与えました。このエピソードは、『ドクター・フー』シリーズの中でも、特に記憶に残る名作の一つと言えるでしょう。

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