キユミの詩集 サユルの刺繍

キユミの詩集 サユルの刺繍

『キユミの詩集 サユルの刺繍』（キユミのししゅう サユルのししゅう）は、2010年に公開された日本の映画作品。杉田愉（すぎた ゆう）が監督、脚本、編集、そしてプロデューサーを兼任した。先に発表された『キユミの肘 サユルの膝』に続く、“キユミ＆サユル春夏秋冬シリーズ”の第二作目にあたる。

概要

本作は、世界各国の主要な映画祭で数多く上映され、合計12の賞を獲得するなど、国際的に非常に高い評価を受けた。特に、アカデミー賞公認のウエスカ国際映画祭（スペイン）や、国際映画製作者連盟（FIAPF）公認のサンクトペテルブルク国際記録短編映画祭（ロシア）といった権威ある場でも上映されたことは特筆される。招待上映は世界26カ国の50を超える映画祭に及び、その普遍的なテーマと表現力が認められた形である。

ストーリー

物語の中心となるのは、二人の思春期の少女、キユミとサユルである。キユミは内に秘めた感情を言葉に紡ぎ、詩を書くことに没頭する。一方、サユルは自らの感情を形にするように、詩集ノートのカバーに繊細な刺繍を施す。詩作と刺繍という対照的な方法で内面を表現する彼女たちを通じて、初秋から晩秋へと季節が移りゆく中で揺れ動く、思春期特有の複雑な心模様が静かに、そして丁寧に描かれる。

国際的な評価と受賞歴

本作は、特に短編映画や独立系映画に強い映画祭を中心に、顕著な実績を残している。

南米では、ブラジルの第38回バイーア国際映画祭において、グラウベル・ローシャ没後30年の記念開催という歴史的な場でコンペティション部門に選出され、最高賞に次ぐ銀犰狳賞（タトゥ・デ・プラッタ賞）に輝いた。また、チリの第19回サンティアゴ国際短編映画祭では、その映像美が高く評価され、最優秀撮影賞（ベスト・シネマトグラファー賞）を獲得している。

北米においては、アメリカのシネ・ゴールデン・イーグル・アワードで第56回金鷲賞を受賞。さらに、クエンティン・タランティーノがオーナーを務め、80年以上の歴史を持つハリウッドの老舗映画館「ニュー・ビバリー・シネマ」でも劇場公開されるという快挙を成し遂げた。

欧州では、スペインの第16回バリャドリード国際短編映画祭で、主演を務めた丸山桃子と品田涼花が揃って最優秀女優賞の候補にノミネートされるという成果を上げた。ボスニア・ヘルツェゴビナの第5回プルヴィカーダル国際記録短編映画祭では、最高賞であるパヴレ・カラジョルジェヴィチ賞に輝いている。

その他、第44回ヒューストン国際映画祭（アメリカ）での金賞（ゴールド・レミ・アワード賞）受賞や、第6回ハリウッド・リール・インディペンデント映画祭（アメリカ）での最優秀実験映画賞（ベスト・エクスペリメンタル・フィルム賞）受賞など、国内外で多数の賞を獲得している。

国内においても、第11回伊参スタジオ映画祭や第5回田辺・弁慶映画祭で上映されたほか、第21回映画祭TAMA CINEMA FORUM 第12回TAMA NEW WAVEコンペティションで特別賞を受賞。映画雑誌『キネマ旬報』の第85回ベストテンでは文化映画部門の28位にランクインするなど、一定の評価を得ている。

キャスト

キユミ：丸山桃子
サユル：品田涼花

スタッフ

エグゼクティブプロデューサー：杉田至
プロデューサー：杉田愉
監督：杉田愉
脚本：杉田愉
編集：杉田愉
撮影：サーシャ・ソクーロフ
録音：リーリア・ソクーロフ
美術：甲斐真弓
* 衣裳：杉田和美

製作

「キユミの詩集 サユルの刺繍」製作委員会 / フィルム・グラン・フェッテ

これらの国際的な実績は、日本の短編映画として特筆すべきものであり、杉田愉監督および製作陣の力量を示すものである。

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