キリストの洗礼 (ペルジーノ、ヌンツィアテッラ礼拝堂)

キリストの洗礼：ペルジーノによるルネサンスの傑作

ピエトロ・ペルジーノが1507年から1513年にかけて制作したフレスコ画『キリストの洗礼』は、盛期ルネサンスを代表する作品の一つです。この祭壇画は、フォリーニョのヌンツィアテッラ礼拝堂の洗礼者聖ヨハネの祭壇のために描かれ、『新約聖書』に記されたイエス・キリストがヨルダン川で洗礼を受ける場面を描いています。

制作背景

ヌンツィアテッラ礼拝堂は、もともと受胎告知のフレスコ画を収容するために1490年から1494年にかけて建設されました。この礼拝堂は、フォリーニョの人々がよく訪れていたフィレンツェのサンティッシマ・アンヌンツィアータ聖堂と区別するために「小さなアヌンツィアータ（受胎告知）」という意味で名付けられました。内部には5つの大きな祭壇があり、ペルジーノの『キリストの洗礼』はそのうちの一つ、洗礼者聖ヨハネの祭壇に飾られています。

祭壇上部のリュネットにはペルジーノ自身が描いた『父なる神』が配置されており、作品とリュネットの間には装飾帯があります。この装飾帯には1507年の日付と、アヌンツィアータ会の牧師であるジョヴァンニ・バッティスタ・モルガンティによって発注されたこと、そしてペルジーノによって制作されたことが記されています。モルガンティの発注であることは、祭壇石枠の左上にあるモルガンティ家の紋章（2羽の白鳥）からも明らかです。

作品の特徴

ペルジーノは以前にもシスティーナ礼拝堂でキリストの洗礼の壁画を手がけており、この主題は彼の顧客の間で人気がありました。そのため、彼は同じ構図を繰り返し用いることが多く、本作も例外ではありません。特に、チッタ・デッラ・ピエーヴェ大聖堂や美術史美術館にある同主題の作品と類似性が高いです。

画面中央では、イエス・キリストが洗礼者ヨハネから洗礼を受けている様子が描かれています。イエスは洗礼を受けるために頭を下げ、洗礼者ヨハネは器でヨルダン川の水をすくってイエスの頭にかけています。彼らの足元にはヨルダン川が流れ、その両岸には洗礼の場面を見守る4人の天使が描かれています。最前景に立つ2人の天使は、チッタ・デッラ・ピエーヴェ大聖堂の作品に描かれた天使と同じポーズをとっています。画面左の天使は胸の前で両腕を交差し、右の天使は腰に手を当て瞑想しています。後方の2人の天使はひざまずいて祈りを捧げています。

空にはケルビムと共に飛翔する2人の天使が描かれ、その間には白い鳩の姿で表された聖霊が翼を広げています。さらに上部には、球体を持つ父なる神が雲の上に座り、右手を上げて、百合を持つ2人の天使とともに地上の出来事を祝福しています。

背景にはフォリーニョ周辺の風景が描かれており、ヨルダン川はウンブリア地方を流れるトピーノ川をモデルにしていると考えられます。

作品の現状

フレスコ画は長年の湿気により傷みが進んでおり、19世紀から20世紀にかけて修復が行われています。それでも、ペルジーノの優れた技術とルネサンスの精神が息づくこの作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

ギャラリー

[画像1]
[画像2]
[画像3]
[画像4]

参考文献

* 『西洋絵画作品名辞典』黒江光彦監修、三省堂（1994年）

もう一度検索