受胎告知

受胎告知について

受胎告知（じゅたいこくち、英: Annunciation）は、キリスト教の聖典『新約聖書』に記されている重要なエピソードの一つです。この出来事は、一般的に処女マリアが天使ガブリエルから妊娠を告げられた場面として知られています。また、聖霊による無原罪の受胎を通じて、イエス・キリストの誕生が予告される重要な瞬間となります。この出来事は、マリア崇敬の思想を基にしており、キリスト教文化圏の様々な芸術作品の中でしばしば取り上げられるテーマでもあります。

受胎告知の記念日

受胎告知を記念する祭日は、東方教会を起源としており、後に西方教会に広まりました。現在、カトリック教会では3月25日に、正教会では4月7日に祝われています。カトリック教会ではこの日を「神のお告げの祭日」と呼び、正教会では「生神女福音祭」とされ、十二大祭の一つとして位置づけられています。

福音書における記述

受胎告知が具体的に記されているのは「マタイによる福音書」と「ルカによる福音書」です。マタイによる福音書では、ナザレではなくおそらくベツレヘムで、ヨセフの夢の中に天使が現れますが、マリアへの直接的な告知は述べられていません。一方、ルカによる福音書では、ナザレにて天使ガブリエルがマリアの前に現れ、彼女が聖霊によって妊娠することを告げています。ヨセフに関する言及はありません。

旧約聖書との関連

受胎告知は、旧約聖書の「イザヤ書」の預言（7:14）にも関係付けられています。マタイの著者によると、この預言はイエスの誕生につながるものとされていますが、元々はアハズ王に与えられたものであり、処女懐胎を直接示すものではありません。旧約聖書では、神が子を授ける例が幾つか存在しており、不妊のマノアの妻がサムソンを授かる場面などがあります。

美術における受胎告知

受胎告知は美術作品においても重要なテーマです。絵画では、マリアが読書をしている姿や、糸を紡いでいる姿が多く描かれ、周囲には純潔の象徴である白い百合が置かれています。天使とマリアの頭上には、光や聖霊の鳩が描かれ、この瞬間が聖霊によるものであることを示しています。

特に中世の作品には、ランス大聖堂の彫像やシモーネ・マルティーニの祭壇画などがあり、ルネサンスに入るとこのテーマはさらに人気を集めました。フラ・アンジェリコやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの優れた作品が多く残されています。またエル・グレコもこのモチーフを好み、多くの作品を創作しました。

正教会においては、イコノスタシスの門にこの場面を描くことが伝統となっています。一般的には左右の扉に天使とマリアを配置し、聖霊を象徴する鳩などは省略されることが多いですが、単体のイコンでは神を象徴する光や聖霊の光が描かれます。

受胎告知は、キリスト教信仰において重要な位置を占める出来事であり、その影響は信仰のみならず、文化や芸術においても今なお感じられています。

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