キリスト教における独身制

キリスト教における独身制

キリスト教における独身制は、特に教役者や修道士に求められることが多いですが、その意義や解釈は教派によって異なります。近年では、カトリック教会の性的虐待事件を背景に、独身制に対する議論が活発化しています。

各教派の独身制

正教会

正教会では、修道士、修道女、修道司祭には独身が求められますが、在俗司祭は妻帯していることが一般的です。主教は修道士から選ばれるため、必然的に独身者となります。ただし、妻帯司祭が妻の同意を得て修道院に入り、修道司祭を経て主教になるケースもあります。

正教会は、結婚を「神の姿に似せて行う」創造行為と捉え、夫婦関係を肯定的に捉えています。修道生活は、婚姻や性的関係を罪や病とみなす考えから行われているのではなく、キリストの生き方に倣うことを目的としています。キリストが妻帯せず、貧困の中で祈りに明け暮れたように、修道士も同様の生活を目指します。

修道士に求められる服従、無欲、童貞の誓いのうち、童貞は独身と同義ではありません。肉体的満足の抑制は結婚生活においても必要です。修道生活における孤独は、神を「伴侶」とすることで克服されます。修道士は全身全霊で神を志向し、自己を見つめ直すのです。

カトリック教会

カトリック教会では、1139年の第2ラテラン公会議で独身制が定められました。その根拠は、イエス・キリストの教え（マタイ19:10-12）や使徒パウロの教え（第一コリント7章）に求められます。

プロテスタント

プロテスタントでは、マルティン・ルターが独身制を否定し、元修道女と結婚しました。ジャン・カルヴァンも『キリスト教綱要』で、結婚を禁じる者は「悪霊の偽善」に基づくと批判し、独身制を否定しています。カルヴァンは、独身の賜物はごく少数に与えられたものであり、不貞潔に対抗する唯一の救済手段は結婚であると主張しました。

聖書の解釈

キリスト教における独身制の議論は、聖書の解釈に深く関わっています。パウロは第一コリント7章で独身について述べていますが、その解釈は様々です。一部には、グノーシス主義の影響を見る説もありますが、独身を守る人々を含む教派はそのような見解を採りません。

現代における議論

2002年に明るみに出たカトリック教会の性的虐待事件は、独身制に対する議論を活発化させました。独身制が性的虐待の要因の一つであるという指摘や、独身制の見直しを求める声も上がっています。

まとめ

キリスト教における独身制は、教派によって解釈や意義が異なります。聖書の解釈や歴史的背景、現代社会の状況などを踏まえ、独身制について深く理解することが重要です。

参考文献

『現代カトリック辞典』エンデルレ書店
『岩波キリスト教辞典』
中村敏『著名人クリスチャンの結婚生活』ファミリー・フォーラム・ジャパン
イラリオン・アルフェエフ著、ニコライ高松光一訳『信仰の機密』東京復活大聖堂教会（ニコライ堂） 2004年

関連項目

* 修道院

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