キンエノコロ

キンエノコロ

キンエノコロは、イネ科エノコログサ属の一年生雑草です。エノコログサとよく似た穂の形をしていますが、最大の特徴は、穂に密生する毛の色です。エノコログサの毛が緑色であるのに対し、キンエノコロの毛は黄色をしており、光を受けて金色に見えることから、その名が付けられました。

分布

キンエノコロは、ヨーロッパ原産であり、現在では北半球の温帯から熱帯にかけて広く分布しています。日本国内でも、北海道から九州まで、道端や休耕地、畑などでごく普通に見られます。同属のアキノエノコロと共に、最終氷期から日本に自生しており、エノコログサよりも古い時代から存在していたと考えられています。

特徴

キンエノコロは一年生草本であり、生育期間は限られています。種子から発芽し、成長して開花・結実し、そして枯死するというサイクルを一年以内に完了させます。草丈は種類や生育環境によって異なりますが、一般的には数十センチ程度にまで成長します。

利用

一部地域では、キンエノコロが栽培されています。インド南部では、脱粒性をなくしたキンエノコロが穀物として栽培されている例があります。しかし、多くの地域では、キンエノコロは雑草として扱われています。ニュージーランドでは、牧草地の広範囲をキンエノコロが覆い、乳生産に悪影響を及ぼしているという報告もあります。

一方で、キンエノコロには有用な側面もあります。エノコログサ属の植物には、人のコレステロール値を下げる効果を持つステロール類が含まれていることが知られています。上越教育大学の研究グループがキンエノコロに含まれるステロール類を測定した結果、100gあたり89.1mgのステロール類が含まれていることが明らかになりました。このことから、キンエノコロが健康食品や医薬品としての利用価値を持つ可能性も考えられます。

このように、キンエノコロは単なる雑草としてだけでなく、食料や健康への貢献という、様々な可能性を秘めた植物でもあるのです。

参考文献

河瀬眞琴「アワ」、鵜飼保雄・大澤良・編著『品種改良の世界史』作物編、悠書館、2010年。
高津戸秀, 糸川恵美子, 阿部文一, 嗚海安久, 「エノコログサ属植物に含まれるステロールのガスクロマトグラフィーによる定量」『日本油化学会誌』第49巻 第7号、2000年、p.727-730,735, 日本油化学会, doi:10.5650/jos1996.49.727
千藤茂行, 細川定治, 「キンエノコロにおける集団分化の研究 : 生育日数、感光性および基本栄養生長性における地理的分化」『北海道大学農学部邦文紀要』第9巻 第4号、1976年、p.277-285。
那須浩郎, 「雑草からみた縄文時代晩期から弥生時代移行期におけるイネと雑穀の栽培形態」『国立歴史民俗博物館研究報告』 第187集 p.95-110, 2014年7月, 国立歴史民俗博物館, ISSN 0286-7400。

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