キングII作戦

キングII作戦：レイテ島攻略と太平洋戦争の転換点

キングII[作戦]は、太平洋戦争において連合国軍がレイテ島と周辺島嶼を攻略するため1944年に行われた大規模作戦です。日本軍は捷一号作戦でこれに対抗しました。本作戦は、フィリピン奪還に向けた連合国軍の戦略において重要な役割を果たし、戦争の帰趨に大きな影響を与えた作戦として知られています。日本語の文献では、この作戦名が言及されることは少ない点が特徴です。

作戦の背景

1944年7月、アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトと軍首脳とのハワイ会談で、フィリピンへの進攻計画が承認されました。南西太平洋方面最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥は、以前から構想していたフィリピン進攻計画「レノ作戦」を修正、改訂を進めました。当初の計画では、ルソン島への上陸は1945年5月を予定していましたが、テニアン島とグアム島の相次ぐ陥落を受け、マッカーサー元帥は進攻計画の早期化を模索しました。

陸軍参謀総長ジョージ・C・マーシャルから計画の再提出を命じられたマッカーサー元帥は、作戦名を「マスケティア作戦」に変更し、上陸時期を大幅に繰り上げました。この計画では、モロタイ島、タラウド諸島、サランガニ島を経てレイテ島への上陸が予定されていました。統合参謀本部は、この計画の一部を採用し、サランガニ島攻略作戦をキングI作戦、レイテ島攻略作戦をキングII作戦と命名しました。

フィリピン進攻後の作戦方針については、台湾進攻を重視する意見とルソン島進攻を重視する意見が対立していました。この問題は、10月3日の統合参謀本部決定でルソン島進攻に決着しましたが、キングII作戦はそれ以前から進められており、フィリピン全土の奪還を目的とした作戦ではありませんでした。

8月、ウィリアム・ハルゼー提督が第3艦隊の指揮権を継承し、フィリピン周辺の日本軍拠点を空襲しました。この空襲で得られた情報から、ハルゼー提督は日本軍の戦力が予想以上に弱体化していると判断し、レイテ島攻略の早期化を提言しました。この提言は、大統領まで含む上層部から支持を得て、レイテ島への上陸は当初計画より2ヶ月繰り上げられました。同時に、サランガニ島攻略は中止されました。

フィリピン進攻は、中部太平洋からの進攻ルートと重なる部分があり、またフィリピンは近隣の味方航空基地から離れた位置にあるため、日本軍の大規模な反撃が予想されていました。そのため、太平洋艦隊の協力が不可欠でした。

作戦計画の概要

キングII作戦は大きく3つの段階に分けられました。

1. 第1段階: 第3艦隊によるパラオなど日本軍拠点への空襲と、ペリリュー島、ウルシー島などへの上陸作戦。その後、休養と補給のため一旦後退。
2. 第2段階: 第3艦隊による台湾、沖縄、北部フィリピンへの空襲。これはニューギニア方面からの第7艦隊の行動と連携した陽動作戦も兼ねていました。この段階で台湾沖航空戦が発生しました。
3. 第3段階: 第7艦隊によるレイテ島への上陸作戦と、第3艦隊による日本軍反撃への対処。

第3艦隊とハルゼー提督

太平洋艦隊の主力機動部隊である第5艦隊の指揮官は、レイモンド・スプルーアンスでしたが、作戦ごとにハルゼー提督と交代する体制が取られていました。ハルゼー提督は、マッカーサー元帥との関係も良好で、フィリピン攻略を強く主張していました。

ニミッツ司令長官はハルゼー提督に、日本艦隊が出撃してきた場合は、作戦のどの段階であっても最優先でこれを攻撃するという命令を下しました。この命令は、マリアナ沖海戦でスプルーアンス提督が日本艦隊の追撃を放棄したことを踏まえたものでした。

潜水艦

アメリカ海軍はハワイとアジアの間に多数の潜水艦を配置し、日本軍の動向を監視していました。レイテ沖海戦では、栗田艦隊を襲撃するなど、重要な役割を果たしました。しかし、ハルゼー提督は潜水艦の指揮権を要求しましたが、ニミッツ司令長官は却下しました。

指揮権とC3システム

キングII作戦では、連合国軍の統一行動のため、マッカーサー元帥が最高指揮官となりました。しかし、第3艦隊はニミッツ司令長官の指揮系統に属し、作戦行動を共にする体制がとられました。

第7艦隊の兵力は弱勢でしたが、ダバオ事件の影響で作戦が繰り上げられたことによって、中部太平洋方面軍から増強部隊が移管され、戦力は大幅に強化されました。

ハルゼー提督は、旗艦として、高速で航続距離の長い艦載機を備え、敵の攻撃にも耐えられるアイオワ級戦艦を要求し、ニュージャージーを旗艦として作戦に参加しました。第3艦隊司令部は、ハルゼー提督の作戦遂行を支援するため、大規模な組織として編成されました。

第7艦隊の上陸作戦では、指揮通信設備を備えた揚陸指揮艦ワサッチが使用されました。この艦は、広範囲かつ高性能な通信能力を備えていました。

通信手段としては、短波通信が用いられ、特に近垂直放射空間波(NVIS)は、近距離通信に効果を発揮しました。アメリカ軍は、情報の収集・共有化にも力を注ぎ、情報収集能力の向上に努めていました。

作戦計画の詳細

作戦計画書は、連合陸海軍と南西太平洋軍の連名で発令され、マスケティア作戦からの継続性が伺えます。計画書には、上陸部隊の編制、上陸地点、作戦行動、通信計画などが詳細に記されていました。

作戦の結果

キングII作戦は、台湾沖航空戦、十・十空襲、レイテ沖海戦など、数々の戦闘を引き起こしました。連合軍は、計画通りに作戦を進め、日本軍に大きな打撃を与えました。作戦の遅れは2週間程度で、その後、作戦の中心はルソン島、硫黄島、沖縄へと移行していきました。

結論

キングII作戦は、太平洋戦争における連合国軍のフィリピン奪還作戦の重要な転換点となりました。この作戦は、マッカーサー元帥の戦略、ハルゼー提督の積極性、そして情報収集・通信システムの整備など、様々な要素が複雑に絡み合って進められました。本作戦の成功は、フィリピン解放への大きな一歩となり、そして終戦へ向けた連合国軍の進撃を加速させる結果となりました。

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