キンシコウ

キンシコウ（金絲猴）

キンシコウ（学名: Rhinopithecus roxellana）は、中国中西部に生息するオナガザル科の霊長類です。その美しい外見から「ゴールデンモンキー」とも呼ばれ、中国では金絲猴（jīnsīhóu）という名で親しまれています。

分布

キンシコウは、中国の中西部、具体的には甘粛省、湖北省、四川省、陝西省といった地域に分布しています。これらの地域は標高が高く、キンシコウは1,200 - 3,000メートル以上の落葉広葉樹林や針葉樹林、混交林などに生息しています。

形態

キンシコウは、体長が66 - 76センチメートル、尾長が56 - 72センチメートルほどで、オスは体重が約16.4キログラム、メスは約9.4キログラムです。背中や尾は暗褐色や黒褐色をしており、腹部は橙がかった白色をしています。顔の周囲や胸部、四肢は鮮やかな橙色をしています。また、眼上部や鼻の周囲は淡青色で、口吻は白いのが特徴です。種小名roxellanaは、鼻が上向きだったとされるスレイマン1世の後宮ロクセラーナに由来します。

分類

キンシコウは、かつてはドゥクモンキー属に含められることもありましたが、現在ではシシバナザル属として独立しています。また、ウンナンシシバナザルやキシュウシシバナザルを亜種として、キンシコウを基亜種とする説もありました。現在では3つの亜種が認められています。

Rhinopithecus roxellana roxellana (Milne-Edwards, 1870)
Rhinopithecus roxellana hubeiensis Wang, Jiang & Li, 1998
* Rhinopithecus roxellana qinlingensis Wang, Jiang & Li, 1998

生態

キンシコウは、1頭のオスと数頭のメスからなる群れを形成し、その群れが集合して100 - 300頭にも達する大規模な群れを形成することがあります。しかし、昼間は小規模な群れに分散して行動します。

食性は雑食で、主に植物の葉を食べますが、樹皮、果実、種子、地衣類、昆虫、鳥類やその卵なども食べます。

天敵としては、ヒョウ、アジアゴールデンキャット、ドール、オオカミなどが挙げられます。

人間との関係

キンシコウは、体毛がコートなどに利用されたり、肉や骨が薬用になると信じられてきた歴史があります。しかし、現在では農地開発による生息地の破壊、密猟、観光による撹乱などにより、生息数が減少しています。ワシントン条約によって保護されており、日本では特定動物に指定されています。

神戸市立王子動物園では、初めて飼育下繁殖に成功し、その他、東山動植物園・金沢動物園・ズーラシア・熊本市動植物園などでも繁殖に成功しています。

孫悟空との関係

『西遊記』に登場する孫悟空のモデルになったという説があります。孫悟空の容姿は目が金色で体は白いとされ、キンシコウとは風貌が異なりますが、関連性を指摘する声もあります。また、インドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場するハヌマーン神が元になったとする説もあります。

キンシコウは、その美しい姿と希少性から、保護の必要性が高い動物です。生息地の保全や密猟の防止など、様々な取り組みが求められています。

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