キ11 (航空機)

キ11 - 日本陸軍の試作戦闘機

キ11は、第二次世界大戦前に日本陸軍のために設計された単発・単葉・単座の戦闘機です。この機体の設計と製造は中島飛行機が担当しました。競作として川崎飛行機のキ10（九五式戦闘機）との審査が行われましたが、キ11は不採用となりました。

概要

1934年（昭和9年）、陸軍は新型戦闘機の試作を川崎と中島に指示しました。これまでの九一式戦闘機や九二式戦闘機の後継機として、両社はそれぞれ異なるアプローチで開発を進めました。川崎はオーソドックスな複葉機を選択したのに対し、中島は低翼式単葉機を選びました。1935年4月から12月にかけて、キ11は4機の試作機が製作されました。

試作機の胴体は全金属製モノコック構造で、翼は木金混合骨組にジュラルミン板張りという構造が採用されました。また、主翼の根本部分には滑らかな形状が設計され、空気抵抗を軽減する工夫が施されていました。主脚は固定式でスパッツ付きで、鋼製の張線で補強されています。外観は当時アメリカの主力戦闘機であったP-26に似ていましたが、キ11は後発機だったため、構造の面で大幅に改良されていました。

昭和10年の9月からは、陸軍によってキ10との比較審査が行われました。その結果、速度性能においてはキ11が優れていたものの、運動性や上昇力ではキ10が勝っていました。陸軍は格闘戦を重視していたため、次期戦闘機にはキ10を採用することに決定しました。それに対し、キ11は試作機の一部が研究機材として使用されることになり、残りの機体は民間へと転用されました。

九試単座戦闘機

1934年には海軍からも競争試作の命令が下され、中島はキ11のエンジンを海軍指定の「寿」五型に変更した九試単座戦闘機を試作しました。しかし、三菱重工業による機体が高性能であったため、この改良版も不採用となりました。

輸出計画

当時の高性能機体であったキ11は、輸出用戦闘機としての生産計画も立てられました。英文のパンフレットも作成され、いくつかの商談が行われたものの、アメリカ製のカーチス75ホークなどの競合機に対して遅れを取り、注文は一機もないまま計画は頓挫してしまいました。

民間機としての利用

不採用決定後、試作機の一部は通信機として民間に払い下げられ、「中島AN-1通信機」と名付けられました。試作3号機は大阪毎日新聞社に、試作4号機は朝日新聞社にそれぞれ払い下げられました。民間機として使用される際に、主脚のスパッツが細身のものに改修されるなどの変更が行われ、プロペラも二枚に変更されました。このAN-1は、日本最速の民間機として名を馳せ、1936年には飯沼正明飛行士が大阪 - 東京間を1時間30分で飛行する記録を打ち立てました。また、朝日新聞社ではこの機体を使用して神風号の訪欧飛行の訓練を行いました。

スペック

• - 全長: 6.89m
• - 全幅: 10.89m
• - 全高: 3.33m
• - 翼面積: 19.1m²
• - 自重: 1,269kg
• - 全備重量: 1,560kg
• - エンジン: 中島「寿」三型 空冷9気筒エンジン 550 hp
• - 最大速度: 402 km/h（AN-1は430 km/h）
• - 滞空時間: 2.5時間（AN-1のデータ）
• - 武装: 7.7mm機関銃 × 2
• - 乗員: 1名

参考文献

• - 野沢正 『日本航空機総集 中島篇』 出版協同社、1963年、74 - 78・185頁。

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