キ12 (航空機)

キ12戦闘機

キ12は、1930年代に日本陸軍のために開発された単発・単座の戦闘機で、設計と製造は中島飛行機によって行われました。この機体は、日本初の油圧式引込脚を装備した戦闘機として注目されましたが、最終的には不採用となりました。その背景や特徴について詳しく見ていきましょう。

概要

1935年（昭和10年）、陸軍はフランスから輸入したドボワチン D.510Jを参考にして、中島に新型戦闘機の試作を指示しました。この新型機には、イスパノ・スイザ製のモーターカノン式エンジンが搭載される予定であった。一方、海軍では九六式艦上戦闘機に同様のエンジンを搭載した機体が三菱により試作されていました。

中島ではフランスから招かれた技師の指導の下、1936年（昭和11年）10月に試作機が完成しました。これがキ12です。外観はD.510Jに似ているものの、主脚に油圧式の完全引込脚を採用し、尾輪もまた引込式となっていました。これは日本の戦闘機においては初の試みであり、その革新性が際立ちました。また、主翼にはスプリットフラップが採用され、翼形状にも改良が加えられました。

武装面では、キ12は7.7mmの機関銃を2挺、加えてモーターカノン式の20mm機関砲を1門装備しており、当時の陸軍機の中では重武装な部類に入ります。

評価と不採用理由

しかし、試験飛行の結果、キ12は運動性や安定性の点で他の同時期の機種に比べて劣っていると評価されました。特に九七式戦闘機の原型となるPE実験戦闘機との比較で、格闘性能が不十分と見なされたことが大きな要因でした。陸軍では格闘性能を重視していたため、キ12は不採用の道を歩むことになりました。元々、この機体は重戦闘機的な設計傾向を持っていたため、この評価はある程度仕方のないものでした。

また、技術的な側面からも、当時の日本ではモーターカノン付きエンジンの量産が難しい状況でした。この量産の困難さも、キ12が不採用となる一因でした。そのため、革新的な機体にも関わらず、生産は試作機1機のみで終わる結果となりました。

スペック

以下は、キ12の主なスペックです：

• - 全長：8.30 m
• - 全幅：11.00 m
• - 全高：3.30 m
• - 翼面積：17.0 m²
• - 自重：1,400 kg
• - 全備重量：1,900 kg
• - エンジン：イスパノ・スイザ 12Xcrs 液冷V型12気筒エンジン 690 hp×1
• - 最大速度：480 km/h
• - 航続距離：800 km
• - 武装：7.7 mm機関銃×2、20 mm機関砲×1（モーターカノン）
• - 乗員：1 名

結論

キ12は、日本陸軍にとって初の油圧式引込脚を持つ戦闘機でしたが、運動性能や安定性の不足により不採用に終わったという歴史的な背景があります。その革新性は評価されるものの、戦闘機として求められる要件を満たすことができなかったため、実際の運用には至らなかったことが各種文献で語られています。

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