キ50 (航空機)

キ50重爆撃機の概要

キ50は、大日本帝国陸軍によって計画された重爆撃機であり、実際の製作には至りませんでした。この機体の設計は1937年に三菱重工業に対して行われ、当初は中島飛行機のキ49（後の一〇〇式重爆撃機）と同様の双発重爆撃機としての開発が求められました。しかしながら、三菱は当時の改良作業に集中しており、設計は停滞しました。

1938年に入ると、キ50の計画は方針変更があった。陸軍は、爆弾搭載量 の優先度を下げ、航続力を重視した遠距離爆撃機へと変更したのです。この新たな方向性は、次期試作機の設計に深く影響を与えることになりました。その際、陸軍航空技術研究所は三菱の設計課長に対して、具体的な概要を示しました。

具体的には、陸軍参謀本部からの案は、最大750 kgの爆弾を搭載し、行動半径は3,500 kmに加え、余裕の燃料を確保した設計でした。この案では、燃料満載と500 kgの爆弾搭載を想定していました。一方、浜松陸軍飛行学校の案は、爆弾搭載量を1,500 kgに増やし、行動半径は3,000 km＋若干の余裕をもたせた内容です。また、浜松の案では、従来の7.7mm機銃の代わりに、威力の高い9mm機銃を装備することも求められました。

さらに、浜松案では最大速度が500 km/hを超えることと、ディーゼルエンジンを用いる研究も進められることになりました。この時点で航空技術研究所は、1941年3月に実験機の審査を完了し、1943年までに本機体の審査を行う予定を立てていました。しかし、1940年初頭には計画の進展が停滞し、最終的には中止に至ってしまいました。

加えて、九二式重爆撃機の後継機として、ドイツのユンカース社からの購入・改設計案が議論されていたJu 90が、キ50と同等の遠距離爆撃機として考えられたこともありました。1938年の交渉が三菱に担当されていたものの、ユンカース社が海外向け機体を開発する余裕を失い、これらの計画は頓挫しました。

なお、キ50という名称は、一〇〇式重爆撃機を改造した空中給油機または燃料輸送機にも予定されていたことがあります。このように、キ50は計画段階で多くの興味深い特徴と背景を持ちながら、実体としては姿を現さなかった機体となっています。

参考文献

• - 歴史群像編集部 編『決定版 日本の陸軍機』学研パブリッシング、2011年。
• - 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年。
• - 秋本実『巨人機物語 知られざる日本の空中要塞』光人社、2002年。
• - 野沢正 『日本航空機総集 中島篇』出版本協同社、1963年。

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