VCF

VCF（電圧制御フィルター）とは

VCF（Voltage-controlled filter）は、主にアナログシンセサイザーで用いられる、電圧によって音声信号の倍音成分を制御する機能です。これにより、音色の明るさや厚みを変化させ、多彩なサウンドを作り出すことができます。アナログシンセサイザーにおいて、VCO（電圧制御発振器）で生成された波形をVCFで加工するという基本的な構造を持ち、音色を決定する重要な役割を担っています。

VCFの役割

VCFは、入力された音声信号に含まれる倍音をカットすることで音色を変化させるフィルターとして機能します。これにより、特定の周波数帯域を強調したり、減衰させたりすることが可能となり、多様な音色を作り出すことができます。

VCFの種類

VCFには、主に以下の種類があります。

1. ローパスフィルター（LPF）：
- 低域の周波数成分を通過させ、高域の周波数成分をカットするフィルターです。
- 高域の倍音を減衰させることで、音が丸く、暖かみのあるサウンドになります。

2. ハイパスフィルター（HPF）：
- 高域の周波数成分を通過させ、低域の周波数成分をカットするフィルターです。
- 低域の倍音を減衰させることで、音がすっきりとし、クリアなサウンドになります。

3. バンドパスフィルター（BPF）：
- 特定の周波数帯域のみを通過させるフィルターです。
- ローパスフィルターとハイパスフィルターを組み合わせることで実現できる場合があります。

4. バンドエリミネーションフィルター（BEF、別名バンドリジェクトフィルターまたはノッチフィルター）：
- 特定の周波数帯域のみをカットするフィルターです。
- ローパスフィルターとハイパスフィルターを並列に接続することで実現できる場合があります。

これらのフィルターは、減衰が始まる周波数を遮断周波数（カットオフ周波数）と呼び、通常-3dBの減衰がある点を指します。また、バンドパスフィルターやバンドエリミネーションフィルターにおいては、通過またはカットする帯域の中心を中心周波数と呼びます。VCFでは、これらの遮断周波数や中心周波数を電圧で制御することが一般的です。

VCFの減衰傾度

VCFの設計によって、減衰傾度（ロールオフ特性）には違いがあります。次数が増すごとに-6dB/oct（オクターブあたり-6デシベル）ずつ傾斜が増し、一般的なVCFでは-6dB/oct、-12dB/oct、-18dB/oct、-24dB/oct程度の傾度が多く用いられます。例えば、モーグ・シンセサイザーでは-24dB/octのVCFが、オーバーハイムのシンセサイザーでは-12dB/octのVCFがよく使用されます。この減衰傾度はVCFの個性を測る指標の一つとなりますが、音質は他の設計要素にも影響されます。

モジュレーション（変調）

VCFは、外部信号によってその動作（特に遮断周波数や中心周波数）を制御することが可能です。これをモジュレーションと呼びます。アナログシンセサイザーでは、エンベロープジェネレーターやLFO（低周波発振器）からの制御信号をVCFのモジュレーションに利用することで、音色に時間的な変化を加えることができます。これにより、ダイナミックで表現豊かな音作りが可能となります。

さらに、演奏された音程の変化に合わせてカット領域を変化させるキーボード・トラッキングも重要な機能です。これにより、演奏する音程が変わっても、常に適切な倍音をカットすることが可能になります。

レゾナンス（共鳴）

レゾナンスは、VCFの重要なパラメータの一つで、遮断周波数付近の倍音成分を強調する機能です。レゾナンスを強く設定することで、特定の周波数帯域が強調され、独特の音色を得ることができます。また、一部の機種では、レゾナンスを特定の値以上に設定すると自己発振を始め、それ自体を音源として利用することも可能です。電子工学的には、これはQ値（クオリティファクター）に対応します。メーカーによっては「Emphasis」とも呼ばれます。

まとめ

VCFは、アナログシンセサイザーにおける音作りの要となる重要な要素です。その種類、減衰傾度、モジュレーション、レゾナンスなどのパラメータを理解し、適切に使いこなすことで、多彩で表現豊かなサウンドを生み出すことができます。

関連項目

• - アナログシンセサイザー

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