ギブソン・マローダー

Gibson Marauder

「マローダー」（Marauder）は、アメリカのギターメーカーであるギブソン社が、1974年から1979年にかけて製造したソリッドボディのエレクトリックギターです。このモデルは、当時エレキギター市場で大きなシェアを占めていたフェンダー社に対抗することを意図して開発されました。モデル名の「マローダー」は「略奪者」を意味し、他社から市場シェアを奪うという意気込みが込められていましたが、商業的な成功を収めるには至らず、約5年間という比較的短い期間で生産を終えました。総生産数は約6,400台とされ、ギブソンの歴史の中でも生産数の少ない希少なモデルの一つとなっています。

主な仕様と特徴

マローダーは、1975年に正式に発表されました。ギブソンとしては珍しい、ネックがボディにボルトで固定されるデタッチャブルネック構造を採用した点が大きな特徴です。ボディ形状は同社の代表モデルであるレスポールに非常に似ていますが、ピックガードのデザインは全く異なり、レスポールと比較して軽量に作られています。ヘッドストックの形状は、フライングVモデルに近いシャープなデザインです。スケール長（弦長）はレスポールと同様に設定されています。

ピックアップは、高名なピックアップデザイナーであるビル・ローレンス氏が手掛けたものが搭載されています。フロントポジションにはハムバッキングピックアップが、リアポジションにはシングルコイルピックアップがマウントされており、異なるタイプのピックアップを組み合わせている点もユニークです。

コントロール部には製造年によって違いが見られます。初期の1975年モデルでは、1弦側のカッタウェイ付近に設置された3ポジションのトグルスイッチでピックアップの選択を行いました。しかし、1976年頃からは仕様が変更され、スイッチの代わりにフロントとリアのピックアップの音量バランスを調整するバランサーコントロールが採用されました。

サウンド特性

デタッチャブルネック構造であることや、ピックアップの配置構成から、フェンダー社のテレキャスターカスタムなどを連想させるサウンド特性を持つとされます。しかし、レスポールなどの伝統的なギブソンギターが持つ豊かな中低音の鳴りは、マローダーでは控えめな傾向にあるようです。生産数が少ないことに加え、サウンド特性も影響してか、熱心な愛用者は多くはないとされています。

コピーモデル

マローダーはその個性的な仕様から、コピーモデルも存在しました。イーエスピー（ESP）の子会社であるエドワーズ（Edwards）ブランドは、かつてマローダーのコピーモデルを製造していましたが、2008年に生産を終了しています。

エドワーズ製のコピーモデルは、オリジナルとはいくつかの仕様が異なります。例えば、ボディの下半分の膨らみがギブソン製よりも大きく、リアピックアップは外見こそシングルコイル風ですが実際にはミニサイズのハムバッキングピックアップが搭載されていました。また、ボディ材にはアルダーが使用され、ネック構造はデタッチャブルではなくセットネックが採用されるなど、細部においてオリジナルとは異なる設計がなされていました。

使用アーティスト

マローダーを使用したことで知られるアーティストも存在します。

後藤正文（ASIAN KUNG-FU GENERATION）: かつてメインギターとして使用していましたが、近年ではサウンドのパワー不足を感じることがあり、使用頻度は減少しているようです。
ポール・スタンレー（KISS）: メインギターではありませんでしたが、ライブパフォーマンス中にしばしばステージでギターを破壊する際に使用したことでも知られています。
* デリック・ウィブリー（Sum 41）: ミュージックビデオなどでマローダーを演奏している姿が確認されています。

短命に終わったモデルではありますが、ギブソンとしては異色の仕様を持ち、その希少性から現在ではコレクターズアイテムとしても扱われることがあります。

もう一度検索