ギムレー

ギムレー：北欧神話の楽園

北欧神話において、ギムレー(Gimlé)とは、ラグナロク後の世界に存在するとされる、光り輝く広間です。その語源は諸説ありますが、「火に対して保護された場所」という意味が有力です。 神々が善行の人々を迎え入れる楽園として描かれ、永遠の安らぎと幸福が約束された場所とされています。

『ギュルヴィたぶらかし』におけるギムレー

『ギュルヴィたぶらかし』では、ギムレーは天の南の端に位置すると記されています。その輝きは太陽を凌駕し、美しさにおいても比類のない場所とされています。重要なのは、世界の終焉であるラグナロクをも乗り越え、存在し続けるという点です。 この記述は、ギムレーが単なる一時的な安息の地ではなく、永遠の楽園であることを強調しています。

同書では、死後、善行の人々はギムレー、またはヴィーンゴールヴで神々と共に永遠の生命を享けると記されています。対照的に、悪行の人々はヘルヘイムへと送られるとされます。この記述は、北欧世界における善悪の明確な区別と、死後の世界における報償の概念を示しています。ギムレーの存在は、北欧人の死生観の一端を垣間見せてくれる重要な要素と言えるでしょう。さらに、アンドラング、ヴィーズブラーインという天上の階層の上にギムレーが存在すると示唆されており、その位置づけの高さが強調されています。

『巫女の予言』におけるギムレー

『巫女の予言』では、ギムレーに黄金の館がそびえ立っている様子が詩的に描かれています。その美しさは太陽をも超える輝きを放ち、そこで暮らす誠実な人々は永遠の幸福を享受すると記されています。この記述は、『ギュルヴィたぶらかし』の記述と調和し、ギムレーの楽園としての性質をさらに強調しています。黄金の館という具体的な描写は、ギムレーの豊かさや荘厳さを鮮やかに伝えています。

ギムレーと他の神話的概念

ギムレーは、しばしばヴァルハラ、ヴィーンゴールヴといった他の北欧神話の楽園と比較されます。ヴァルハラは戦死した戦士たちの魂が迎えられる場所であるのに対し、ギムレーは善行を積んだ人々全般が迎えられる場所として、その性質が微妙に異なります。ヴィーンゴールヴも同様に善行の人々のための場所とされていますが、ギムレーとの関係性については、明確に区別されているか、あるいは同一視されているかについては議論の余地があります。

『ギュルヴィたぶらかし』では、ギムレーと対照的に「悪い館」としてナーストレンドが紹介されています。この対比は、ギムレーが善の象徴である一方、ナーストレンドが悪の象徴であることを明確に示しています。これらの場所の対比を通して、北欧神話における善悪二元論的な世界観を読み取ることができます。

まとめ

ギムレーは、北欧神話における理想郷、永遠の楽園を象徴する場所です。ラグナロク後の世界に存在し続け、善行の人々が永遠の幸福を享受するその姿は、北欧人の死生観や宇宙観を理解する上で重要な鍵となります。 『ギュルヴィたぶらかし』や『巫女の予言』といった文献からの記述を分析することで、ギムレーの具体的なイメージ、そしてその背後にある北欧神話の深遠な世界観を垣間見ることができます。 関連する概念であるヴァルハラ、ヴィーンゴールヴ、ヘルヘイム、そしてナーストレンドとの比較を通して、ギムレーの特異性と重要性をより深く理解することができます。

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