ギュルヴィたぶらかし

『ギュルヴィたぶらかし』（古ノルド語：Gylfaginning）は、スノッリ・ストゥルルソンの『エッダ』を構成する一部であり、北欧神話の世界観を体系的に解説した重要な作品です。約20,000語から成り、『エッダ』の冒頭を飾ります。

物語は、スウェーデンの王ギュルヴィが、アース神族の力を探るため「ガングレリ」と名乗り、オーディンの館ヴァルハラを訪れる場面から始まります。神々はギュルヴィの来訪を察知し、幻術をかけます。ヴァルハラに到着したギュルヴィは、ハール、ヤヴンハール、スリジという３人の男に出迎えられ、彼らとの間で問答を繰り広げることになります。

ギュルヴィは、至高の神は誰かという問いを始め、天地創造、人間の創造、ユグドラシルの解説、アスガルドの神々、フェンリルの捕縛、フレイとゲルズの結婚、ヴァルハラ、アースガルズの城壁建設、トールとロキの冒険、バルドルの死、ロキの捕縛、そしてラグナロクといった、北欧神話の根幹をなす様々なテーマについて質問を重ねます。ハールらはこれらの質問に対し、エッダ詩やスカルド詩からの引用を交えながら詳細に答えていきます。

物語の中には、ゲフィオンによる国引き神話も挿入されています。ゲフィオンが国土を削り取ったことで、ギュルヴィは神々の力を知りたくなったという背景が語られます。

特に重要なのは、世界の終末「ラグナロク」に関する記述です。神々と巨人族の壮絶な戦い、世界の崩壊、そしてその後の世界の再生が詳細に語られます。この部分は、北欧神話の終末観を理解する上で欠かせません。そして世界の再生の様子まで語り終えると、ハールは「これより先のことは誰も知らない。ここまでで満足せよ」と告げます。気が付くと、そこには館も人々もなく、ガングレリは何もない草原の上に一人立っていました。その後彼は国に戻り、自身が見聞きしてきたことを人々に語ったとされています。

スノッリは、『ギュルヴィたぶらかし』を執筆するにあたり、古エッダに収録された神話だけでなく、北欧に伝わる伝承からも着想を得ています。例えば、死者の爪を切っておかないと、ナグルファルの材料になるという伝承もその一つです。

『ギュルヴィたぶらかし』は、北欧神話の世界観を理解するための入門書として最適であり、その内容は現代のファンタジー作品にも大きな影響を与えています。スノッリの文章は、北欧神話を単なる物語としてではなく、哲学的な考察や倫理的な教訓を含む深遠な世界として描き出しています。

この作品は、北欧神話に興味を持つすべての人にとって必読の書と言えるでしょう。

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