ギャネンドラ・ビール・ビクラム・シャハ

ギャネンドラ・ビール・ビクラム・シャハ・デーブ

ギャネンドラ・ビール・ビクラム・シャハ・デーブ（Gyanendra Bir Bikram Shah Dev）は、ネパール王国の第12代国王であり、その生涯は激動のネパール現代史を象徴しています。1947年7月7日にマヘンドラ・ビール・ビクラム・シャハ王太子の次男として誕生しました。彼は、ネパールの歴史において二度王位に就き、最終的には王政廃止により退位を余儀なくされました。

最初の即位（1950年）

1950年、ギャネンドラがまだ4歳の時、彼の祖父であるトリブバン国王が、父や兄とともにインドへ亡命しました。この混乱に乗じて、当時権力を握っていたラナ宰相家は、ギャネンドラを国王として擁立し、即位式を強行しました。しかし、この即位は国際的に承認されず、トリブバン国王が翌年帰国し復位したことで、ギャネンドラの最初の即位は「幻に終わった」と評されています。

王弟時代（1972年 - 2001年）

1972年、父マヘンドラの崩御後、兄ビレンドラが国王に即位し、ギャネンドラは王弟として兄の名代を務めました。1989年には、昭和天皇の大喪の礼に国王の名代として参列しています。

摂政就任と復位（2001年）

2001年6月1日、ネパール王族殺害事件が発生し、兄ビレンドラ国王と甥のディペンドラ王太子が死亡しました。ディペンドラは一時国王に即位しましたが、意識不明のまま崩御。ギャネンドラは摂政に就任した後、6月4日に国王として即位しました。しかし、この事件には多くの謎が残り、ギャネンドラが事件に関与したという疑惑も浮上しました。一方で、ギャネンドラは兄ビレンドラが進めていた民主化に反対しており、その強権的な姿勢は国民の反発を招きました。

強権統治と民主化運動

即位後、ギャネンドラは兄の進めていた立憲君主制を否定し、議会を停止、自ら内閣を組織し、事実上の専制君主として振る舞いました。このため、国内の政治情勢はさらに不安定化しました。2002年には下院を解散、首相を解任し、王政復古を宣言しました。主要政党はこれに反発し、大規模なデモが発生しました。また、王族殺害事件以降勢いを増していたマオイストとの戦闘も激化しました。

ギャネンドラは、強権的な姿勢を強めましたが、国内外からの批判は高まりました。2005年には再びデウバ内閣を解任し、親政を宣言。アメリカやイギリス、インドは軍事援助を停止し、ギャネンドラは中国からの武器支援を受け、民主化運動を徹底的に弾圧しました。しかし、主要7政党とマオイストは共同で抗議デモを展開し、全国規模の反王制運動へと発展しました。

国際社会からの圧力も強まる中、2006年4月、ギャネンドラは親政を断念し、国民に権力を返還することを発表しました。その後、解散されていた下院議会を復活させ、政党側が推薦したコイララ元首相が新政権を発足させました。2007年1月には、暫定憲法が制定され、国王の政治的権力はほぼ完全に剥奪され、国号もネパール王国からネパールとなりました。

王制廃止とその後

2008年5月28日、ネパール制憲議会は共和制を採択し、王制廃止が正式に決定しました。ギャネンドラは退位し、ネパール王国は名実ともに滅亡しました。退去の際には、「国民の判断を尊重する」と述べ、王族殺害事件への関与を改めて否定しました。彼は政府の許可を得て、かつての別邸であったナーガールジュン離宮で生活を送っています。

廃位後、ギャネンドラは詩を書いたり、祈祷したりするなどして過ごしています。王政廃止を主導したマオイストのプラチャンダ議長は、ギャネンドラが国内に投資し、雇用創出に貢献することを期待していると述べました。近年、ネパール国内では王政復古を求めるデモも発生しており、ギャネンドラの動向は再び注目を集めています。

ギャネンドラの生涯は、ネパールの激動の歴史と深く結びついており、彼の行動は、ネパールの王政の終焉と民主主義への移行を象徴するものとして語り継がれています。

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