ギュンター・ヴィゼッキー

ギュンター・ヴィゼッキー（Günter Wyszecki、1925年 - 1985年6月22日）は、ドイツ出身のカナダ人物理学者であり、測色学、色識別、色秩序、色覚の分野において多大な貢献をしました。彼はドイツ系カナダ人であり、その業績は国際的に高く評価されています。

教育と初期の研究

ヴィゼッキーは、現在のロシア・ソヴィエツクにあたる東プロイセンのティルジットで生まれました。ベルリン工科大学に進学し、正常な三色性と異常な三色性に関する研究でIng.博士号を取得しました。この初期の研究が、彼の色彩科学への関心を深めるきっかけとなりました。1953年には、フルブライト奨学金を得てアメリカに渡り、ワシントンD.C.にある米国国家標準局（現国立標準技術研究所）の測色・測光部門で、物理学者ディーン・B・ジャッドと1年間共同研究を行いました。この経験は、彼のキャリアにおいて非常に重要な意味を持つことになります。

カナダ国立研究評議会での活躍

1955年、ヴィゼッキーはカナダ国立研究評議会（NRC）に参加し、光学部門で研究を開始しました。1960年には光学部門のリーダーに就任し、1982年には物理部門のアシスタントディレクターとして、組織の運営にも携わりました。彼のリーダーシップの下、NRCは光学および物理学の分野で大きな進歩を遂げました。また、ヴィゼッキーは国際照明委員会（CIE）においても重要な役割を果たしました。

国際照明委員会（CIE）への貢献

ヴィゼッキーは、CIEの活動に積極的に参加し、その科学的貢献とリーダーシップが高く評価されました。1963年から1975年まで測色委員会の委員長を務め、1979年から1983年までは副会長、そして1983年から亡くなるまで会長を務めました。CIEにおける彼の活動は、色彩科学の国際的な標準化に大きく貢献しました。この間、CIEは、2人のCIE標準観測者と標準の光AおよびD65の等色関数の1nm表、推奨測定形状としての積分球反射率測定の追加、1964年のUVWおよび1976年のCIELABとCIELUVの均等色空間と色差の公式など、現在も有効な測色に関する多くの重要な提言を行いました。

晩年と業績

ヴィゼッキーは1985年6月22日、白血病のため60歳で亡くなりました。しかし、彼の遺した業績は、現代の色彩科学の基盤として、今もなおその重要性を失っていません。

出版活動

ヴィゼッキーは、86本の科学論文と3冊の書籍を執筆または共同執筆しました。1960年にドイツで出版された最初の著書「Farbsysteme」は、表色系に関する重要な著作です。また、ディーン・B・ジャッドとの共著である「Color in Business, Science and Industry」の第2版と第3版は、ジャッドの死後に出版され、産業界や科学分野における色彩学の応用に関する包括的な内容が日本語にも翻訳されています。さらに、W・S・スタイルズとの共著「Color Science. Concepts and Methods, Quantitative Data」は、1967年と1982年に出版され、カラーサイエンス分野の記念碑的な著作として、現在でも広く参照されています。

主な著書

Farbsysteme (1960)
Color in Business, Science and Industry (with Deane B. Judd)
Color Science. Concepts and Methods, Quantitative Data (with W.S. Stiles)

ヴィゼッキーの功績は、その研究成果だけでなく、CIEでの指導的役割を通じて、色彩科学の国際的な発展を促進した点にもあります。彼の研究は、今日の色彩科学の基礎を形成し、多くの研究者や技術者に影響を与え続けています。

日本語訳

* Judd, Deane Brewster ; Wyszecki, Günter ; 本明寛 訳『産業とビジネスのための応用色彩学』ダイヤモンド社、1964年。

もう一度検索