ギル (ストリートファイター)

ギル (Gill)

カプコンが開発する対戦型格闘ゲーム『ストリートファイターIII』シリーズをはじめとする作品に登場する架空の人物です。

キャラクター設定

ギルは、遠い紀元前の昔から世界を裏から支配してきたとされる、謎に包まれた秘密結社の最高指導者です。後に彼は自らを「天帝」と称するようになります。彼の最大の目的は、西暦2200年の地球上に自らの理想とする世界の秩序を打ち立てること。ギルは自身を神にも等しい尊い存在であると強く自負しており、その思想は言動の端々にも表れています。勝利時のメッセージでは、対戦相手を諭すような理知的な口調を用いますが、シリーズ初期の『ストリートファイターIII』では高慢な言葉遣い（例: 一人称「私」、二人称「貴様」）も見られました。『2nd IMPACT』以降は落ち着いた穏やかな話し方（例: 二人称「君」）に変化しています。公式プロフィールでは、名前以外の情報がほとんど「不明」とされており、その経歴には多くの謎が残されています。

国籍も明らかにされていませんが、『初代ストIII』では地中海を彼のホームステージとしていました。『2nd IMPACT』以降のステージ背景には、顔を覆う頭巾をかぶった部下たちが登場します。また、『ストリートファイターV』（以下、『ストV』）では、日と月が対照的に照らす「Sun chase moon」が彼のステージとして設定されています。ゲーム中の対戦中は英語で話しますが、対戦後の勝利メッセージは日本語です。

『ストIII』シリーズの前日譚にあたる『ストV』にも登場。ゼネラルストーリーの結末では、ユリアンの下で暗躍していたヘレンの正体が、後にギルの秘書となるコーリンであることが明かされます。コーリンの個別ストーリーでは、ギルが戦争で故郷を失った彼女を自身の組織に迎え入れた経緯が描かれています。後に『ストV』の追加プレイアブルキャラクターとして、2019年12月に配信されました。

身体的特徴

ギルは普段、全身を覆うローブを着用していますが、戦闘に臨む際には褌のような簡素な装いになります。彼の体色は、体の中心線を境に左右で大きく異なっており、右半身が赤色、左半身が青色という独特な配色です。この左右の色は、ゲーム中の向きが変わっても常に固定されています。体の色の違いは能力にも関連しており、右半身からは炎の力、左半身からは氷の力を自在に操ります。例えば、通常技の強攻撃を相手に当てた場合、右側から当てれば相手を燃焼させ、左側から当てれば凍結させるといった効果が現れます。また、戦闘中にギルがニュートラルポーズを取ると、体から炎や氷のオーラが現れては消えるという視覚効果があります。『3rd STRIKE』では、特定の状況（「リザレクション」発動中や敗北時）を除き、彼の体が常に点滅しているのが特徴です。

ボスキャラクターとして

ギルは『ストリートファイターIII』シリーズ全作において、強大なボスキャラクターとしてプレイヤーの前に立ちはだかります。『初代ストIII』では全てのキャラクター共通の最終ボスでしたが、『2nd IMPACT』ではキャラクターごとに個別の最終ボスが設定されたため、必ずしも最終ボスではありませんでした。しかし、その場合でも最終ボスの一つ前の対戦相手として登場するため、どのキャラクターでプレイしてもエンディングに至る過程で必ずギルと戦うことになります。『3rd』では再び全キャラクター共通の最終ボスに戻りましたが、ユリアンやユンなど一部のキャラクターとは対戦前に特別な会話シーンが用意されています。

家庭用版でプレイヤーがギルを使用した場合、対CPU戦の最終ボスはシリーズによって異なります。『初代ストIII』では同キャラクター対戦、『2nd』ではユリアン、『3rd』ではアレックスが相手となります。

『2nd IMPACT』には、特定の条件を満たすことで真・豪鬼が登場する隠し要素があります。この真・豪鬼を倒すと、キャラクターごとのエンディングは流れずにスタッフロールが表示されますが、その背景には倒れているギルの姿が映し出されます。スタッフロールが終わるとギルは起き上がり、光を発しながらポーズを取ります。

『ストV』でも、アーケードモードの『III』コースにおける最終ボスとして登場。プレイヤーが操作できるバージョンよりも大幅に強化されており、二つのVトリガーが常に発動した状態で専用技を全て使用可能。さらに『ストIII』仕様の「メテオストライク」や「リザレクション」といったCPU専用技も繰り出してきます。『3rd』の時と同様、彼の体は常に点滅しています。

他キャラクターとの関係

コーリン: ギルの秘書。前日譚である『ストV』では、ロシア風の防寒服を着た女性「ヘレン」として登場し、弟のユリアンの秘書として暗躍します。ギルから「組織の技術で復活させた戦士にシャドルーを壊滅させる」という預言に従った使命を受けており、ナッシュ、ハン・ジュリ、ラシードといった人物を利用しますが、ベガを倒したのは復活したナッシュではなくリュウでした。ギルはこれを「多少の誤差」として許容し、ヘレンを本来のコーリンの姿に戻しました。ギルは戦争で故郷を失った彼女を組織に雇い入れています。
アレックス: アレックスの同居人であり恩人であったトムをストリートファイトで打ち破った経験があり、これがアレックスが世界を巡る旅に出るきっかけの一つとなりました。
ダッドリー: 『初代ストIII』と『2nd』では、ダッドリーの父が所有していたジャガーをギルが所持していたため、ダッドリーから対戦を挑まれます。ギルは敗北後、このジャガーをダッドリーに返還し、自身も「良い車」と評価しました。
いぶき: ギルが所有する機密文書「Gファイル」の入手を目指し、彼に戦いを挑みます。いぶきのエンディングでは、ギルは彼女に「Gファイル」を渡しますが、「これを見たところで、誰にも何もできない」「宿題の手本にでもしろ」と突き放すような言葉を投げかけます。また、ギルによれば「Gファイル」は渡したもの以外に続きがあり、『3rd』の勝利台詞では「あと2万冊はある」と語っています。
ネクロとエフィー: 『初代ストIII』と『2nd』に登場する、組織から脱走した実験体とその恋人。彼らの情報は組織にとって都合が悪いため、ギルは彼らの捕獲・抹殺を試みます。ダッドリーといぶきに対しては約束を守ったのに対し、ネクロに対しては約束を反故にして抹殺しようとするという、冷酷な一面も見せています。
ユリアン: ギルの実弟。幼い頃から総統候補として共に英才教育を受けていましたが、ギルが「情緒不安定」かつ「弟である」という理由で選抜され、ユリアンは副総統に甘んじます。この屈辱から、ユリアンはギルに対して激しい憎悪と殺意を抱いています。
ヒューゴー: 『2nd IMPACT』でヒューゴーの最終ボスとして登場する際のエンディングでは、一時的な気まぐれとしてヒューゴーとタッグを組み、CWAのタッグトーナメントに出場します。タッグ名は「ラグナロクウィナーズ」で、ギルは「再生と破壊の帝王」と紹介されました。『3rd STRIKE』のヒューゴーのエンディングでは、ヒューゴーが設立したプロレス団体H.W.A.に参加している様子が描かれ、観客に笑顔を見せるなど意外な一面を見せています。

ゲーム上の特徴

ギルはシリーズを通して、アーケード版ではプレイヤーキャラクターとして操作できません（『3rd』で特定のキャラクターの技を使った場合を除く）。しかし、家庭用版では特定の条件を満たすことで使用可能となり、対戦時の勝利台詞やエンディングといった家庭用独自の要素も追加されています。

彼の格闘スタイルは弟のユリアンと多くの点で共通しており、通常技のモーションも似ています。しかし、全体的にユリアンよりも技の隙が少なく、攻撃力も高い設定です。特に通常技の強攻撃は威力が高いだけでなく、ガードされても相手の体力を削る能力を持ちます。必殺技も高性能なものが揃っており、ボスキャラクターにふさわしい圧倒的な強さを誇ります。

カプコンの開発スタッフは、『3rd』のギルについて、「えげつないスーパーアーツを備えている」「脅威の全方位攻撃を出されないように上手く倒してほしい」「天帝として現れ、人を超越した者として非常に手強い」「全画面攻撃も行う」「神々しさにこだわった」といったコメントを残しており、その強烈な性能と演出へのこだわりがうかがえます。

『ストV』では、体の向きによる攻撃効果の変化が無くなり、左右どちらの方向からでも炎と氷の技を使い分けられるようになりました。また、「反属性」という独自のシステムが追加されています。これは、特定の攻撃で「炎やられ」または「氷やられ」という特殊状態を付与し、その状態の相手に反対の属性の技（例: 「炎やられ」に氷属性）を当てることで、通常とは異なるヒット効果が発生するというものです。

主な技

ギルは左右の体色に対応した炎と氷の能力を駆使して戦います。彼の技は、通常技、必殺技、スーパーアーツ（SA）/クリティカルアーツ（CA）など多岐にわたります。特にボスキャラクターとして使用するSAはその強力さで知られています。

リザレクション (SAI): 体力を回復させる技。発動すると体力が全回復しますが、技中に攻撃を受けると中断されます。一度発動するとラウンド中再使用はできません。
メテオストライク (SAII): 空中から大量の炎と氷の隕石を降らせる広範囲攻撃。『ストV』ではCPU専用技としても使用します。
セラフィックウィング (SAIII): 画面中央に移動し、6枚の翼を広げて広範囲に衝撃波を放つ技。ガードは可能ですが、ブロッキングはできません。発動前に潰されるとゲージは減りません。『ストV』ではクリティカルアーツとして使用します。

他にも、左右の属性を使い分ける飛び道具「パイロキネシス / クリオキネシス」、突進技「サイバーラリアット」など、強力な技を多数持っています。

その他の登場作品

『ストIII』シリーズ以外では、『SNK VS. CAPCOM 激突カードファイターズ』シリーズにカードとして登場しています。『CAPCOM FIGHTING Jam』では、ベガのエンディングに倒れた姿で登場するも、すぐに復活するという演出が描かれました。

担当声優

ブルース・ロバートソン: 『ストリートファイターIII -NEW GENERATION-』および『2nd IMPACT』
ローレンス・ベイン: 『ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-』
立木文彦: 『ストリートファイターV』（日本語版）
リアム・オブライエン: 『ストリートファイターV』（英語版）

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