ギルダー

ギルダー（グルデン）：オランダの歴史を刻んだ通貨

ギルダー、またはグルデン（英: guilder、蘭: gulden）は、15世紀から2002年までオランダで使用されていた通貨単位です。略号はNLG（蘭: Nederlandse gulden）で、国際的にはこの表記が用いられましたが、オランダ国内では「ƒ」という記号が広く使われていました。これは、かつての通貨名「フローリン（蘭: florijn）」に由来し、どちらも中世オランダ語のフローリン金貨（gulden florijn）を語源としています。

EU加盟以前のオランダ通貨

ギルダーは、オランダがユーロ圏に加盟するまで長く使用されてきた通貨でした。その歴史はオランダ本土にとどまらず、かつての植民地である蘭領東インドなどにも広がり、現在でも「アンティル・ギルダー」としてその名残が一部地域に残っています。一方、スリナムでは2004年1月1日にスリナム・ドルに移行しています。

ユーロへの交換レートと期限

ユーロへの最終的な法定交換レートは、1ユーロ=2.20371ギルダー（逆算すると1ギルダー=0.453780ユーロ）と定められています。硬貨の交換は2007年1月1日に終了しましたが、紙幣については2032年1月1日までこのレートで交換が可能です。

ギルダーの歴史：フィレンツェ発祥の金貨から

ギルダーの歴史は、1252年にイタリアのフィレンツェで鋳造が始まったフローリン金貨(fiorino d'oro)にまで遡ります。この金貨はヨーロッパ中に広がり、その精巧な技術からオランダやドイツ諸侯国、ポーランドなどでもフィレンツェで金貨の鋳造が委託されるようになり、「fl.」または「ƒ」という表記が用いられるようになりました。

当時のギルダーの価値は国によって異なり、1709年時点ではイギリスの1ポンド、11ギルダー、22ストゥイバー(stuivers)、6ペニーが同等の価値でした。また、6ドイツグルデン、40クロイツァー(kreuzer)、13ポーランドグルデン、6グロシュ(grosz)なども同等の価値を持つとされていました。その後、1フローリン=20ストゥイバー=60クロイツァー、10フローリン=1ポンド、8フローリン=20フラン=4ドルといった換算関係が用いられるようになりました。ハンガリーでは、ギルダーは「フォリント」と呼ばれるようになり、現在も通貨単位として使用されています。

ギルダー銀貨：国王の肖像と紋章

オランダでは1815年の通貨制度改定により1ギルダー=100セントとなり、1818年に新しいギルダー銀貨の発行が始まりました。1999年までの間、歴代の国王の肖像が描かれた銀貨が発行され続けました。イギリスと同様に、国王が代わるごとに肖像の向きが変更された点が特徴です。裏面には1980年まではオランダ王国の紋章が描かれていましたが、1982年以降は幾何学模様に変更されました。

ウィレム1世からウィレム3世、ウィルヘルミナ女王、ユリアナ女王、ベアトリクス女王と、各国王・女王の肖像が時代ごとに刻まれた銀貨は、そのデザインや材質の変化からもオランダの歴史を物語っています。特にウィルヘルミナ女王の在位期間が長く、少女時代から老年期までの4種類の肖像が発行されています。銀貨の材質や大きさも時代と共に変化し、1967年以降はユリアナ女王の肖像が刻まれた銀貨にはニッケルが使用されるようになりました。

また、1/2、2.5、3ギルダーの銀貨や、5、10、20ギルダーの高額金貨も発行されていました。1917年までのギルダー銀貨は.945という非常に高い純度の銀を使用しており、コレクターにも人気があります。補助硬貨としては銅貨や低品位銀貨も発行され、中には正方形の硬貨もあり、これらも収集家の間で珍重されています。

ギルダー紙幣：革新的なデザインと機能性

ユーロ移行まで、オランダでは10、25、50、100、250、1000ギルダーの紙幣が流通していました。これらの紙幣は、鮮やかな色彩と斬新なデザインが特徴で、バーコードの印刷や複製防止のためのユーリオン模様など、当時としては先進的な技術が取り入れられていました。特に250ギルダーという額面は他の先進国には見られず、現在のユーロ紙幣のデザインにも影響を与えたと言われています。

ギルダーは、単なる通貨単位ではなく、オランダの歴史、文化、そして技術革新を反映した存在だったと言えるでしょう。

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