ギルバート&ジョージ

ギルバート&ジョージは、ギルバート・プロッシュとジョージ・パサモアの二人からなる美術家ユニットです。ギルバートはイタリア出身で、ジョージはイギリス出身ですが、二人はロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズで出会い、共に彫刻を学びました。彼らは常に二人で活動し、その独特なスタイルから現代美術の世界で異彩を放っています。

彼らは、パフォーマンス・アーティストとしての側面も持ち合わせており、学生時代には「歌う彫刻」という作品を制作しました。これは、全身を金箔で覆い、テーブルの上で何時間もマイムを続けるというもので、彼らの風変わりな作風を象徴しています。また、彼らは常に同じようなビジネススーツを着用し、公の場に姿を現します。これは、イギリスらしさの象徴であると同時に、普通の人の日常を表しているとも言われています。彼らは自らを「生きる彫刻」と称し、そのすべての行動がアートであると主張しています。

彼らの作品は、パフォーマンスアートだけにとどまらず、写真、ビデオ、ドローイングなど多岐にわたります。特にフォト・モンタージュは、彼らの代表的な表現手法の一つです。1970年代にはモノクロ写真を多用していましたが、1980年代からは鮮やかな色彩を使い始め、ステンドグラスのように黒い線で区切られた巨大な作品群を制作しました。作品には、花や手足、街の若者、そして彼ら自身が頻繁に登場します。これらのモチーフは、聖者のように画面に配置され、独特の世界観を形成しています。

ギルバート&ジョージの作品は、時に大衆に衝撃を与えます。ヌードや性行為、排泄物をイメージした作品は、メディアから強い批判を浴びました。「Naked Shit Paintings」のような挑発的なタイトルも、彼らの意図的なものでしょう。1986年には、ロンドンのイーストエンドに住む若者を美化した作品を発表し、その中の一つの作品に「Paki」という侮蔑的な言葉を使ったことから、人種差別であると批判されました。彼らの作品は常に議論の的となり、その反面、多くの人々に強い印象を与えています。

彼らの功績は高く評価されており、1986年にはターナー賞を受賞、2005年にはヴェネツィア・ビエンナーレのイギリス代表にも選ばれています。日本でも過去に何度か個展が開かれており、1975年には「Dusty Corners」、1978年には「New Photo-Pieces」が、1997年には「ギルバート&ジョージ : 現代イギリス美術界の異才 Gilbert & George: Art for All 1971-1992」が開催されました。彼らの作品は、現代社会の複雑な問題を鋭く問いかけ、観る者に深い思考を促します。

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