ターナー賞

ターナー賞：イギリス現代美術を代表する賞

ターナー賞は、イギリスを代表する現代美術賞として、世界的に知られています。19世紀イギリスを代表するロマン主義画家、J.M.W.ターナーの名を冠したこの賞は、毎年、イギリス在住のアーティストの中から、優れた才能を持つ4名がノミネートされます。

歴史と変遷

1984年に創設されたターナー賞ですが、当初はそれほど注目を集めませんでした。しかし、1991年、テート美術館館長であったニコラス・セロタ卿による改革によって、大きな転換期を迎えます。年齢制限の撤廃やメディアとの連携強化など、様々な施策が導入され、ターナー賞は一躍、現代美術界における重要なイベントへと成長しました。

特に若いアーティストにとって、ターナー賞受賞は大きな飛躍の機会となります。受賞によって世界的な注目を集め、今後の活動の基盤を築くことができるからです。

受賞対象と選考方法

ターナー賞の対象は、イギリス人またはイギリス在住のアーティストです。年齢制限はありません。ノミネートアーティストは、テート美術館によって選考され、毎年春に発表されます。ノミネートされた4名の作品は、ロンドンのテート・ブリテン美術館を中心に、秋から冬にかけて開催される展覧会で展示されます。展覧会期間中に受賞者が発表され、授賞式が行われます。

作品の多様性と議論

ターナー賞で受賞する作品は、その媒体や表現方法に制約がありません。絵画や彫刻、インスタレーション、映像など、多様な作品が受賞対象となっています。

しかし、この自由さが、時に激しい議論を巻き起こす原因にもなっています。ホルマリン漬けのサメや、散らかったベッドといった、従来の美術概念からはみ出した作品がノミネートされたことで、大きな批判が巻き起こったこともあります。

これらの議論は、現代美術に対する社会の関心を高めると同時に、美術界における価値観の多様性を改めて問いかける契機にもなっています。政府関係者や著名人、審査員自身による批判、さらにはアーティストによる抗議活動など、ターナー賞をめぐる議論は多岐にわたります。1999年には、ターナー賞を風刺した「ターニップ賞」という賞が創設されるほどです。

ターナー賞の意義

ターナー賞は、現代美術の動向を示すバロメーターとしての役割を果たしています。また、現代美術を広く一般に知らしめ、議論を喚起する効果も持っています。時に激しい論争を巻き起こす一方で、現代美術の多様性と可能性を提示し続けている、現代美術界を代表する賞なのです。

受賞者一覧（抜粋）

以下は、ターナー賞の歴代受賞者の一部です。受賞作品や表現方法は多岐に渡り、現代美術の幅広さを示しています。

1984年：マルコム・モーリー（絵画）
1991年：アニッシュ・カプーア（彫刻）
1993年：レイチェル・ホワイトリード（インスタレーション）
1995年：ダミアン・ハースト（彫刻）
1998年：クリス・オフィリ（絵画）
2000年：ヴォルフガング・ティルマンス（写真）
2003年：グレイソン・ペリー（陶芸）
2015年：アッセンブル（アーティスト・コレクティブ）
2021年：アレイ・コレクティヴ (アーティスト・コレクティブ)
2022年：ヴェロニカ・ライアン（彫刻）

※このリストは一部であり、多くのアーティストがターナー賞を受賞しています。

ターナー賞は、これからもイギリス、そして世界中の現代美術界に大きな影響を与え続けるでしょう。

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