ギンバル訓練場

ギンバル訓練場（Ginbaru Training Area）

沖縄県金武町に位置していたアメリカ海兵隊の訓練施設、ギンバル訓練場。1972年に「ギンバル訓練場」と「嘉手納第３サイト」が統合され、2011年に全面返還されるまでの歴史を紐解きます。

概要

施設番号：FAC6017
場所：沖縄県金武町字金武
面積：約489,700㎡

歴史

1953年、琉球列島米国民政府は土地収用を強化するため、「土地収用令」を公布し、強制的な土地接収を開始しました。

1957年10月、ギンバル地区の土地収用通知書が発行され、約131,808坪の土地が強制的に接収されました。同年11月には「ギンバル訓練場」として使用が開始されると共に、「嘉手納第３サイト」ではメースBミサイル基地が建設されました。

1970年、メース基地は撤去されました。1972年5月15日の沖縄返還に伴い、「ギンバル訓練場」と「嘉手納第３サイト」が統合され、新たな「ギンバル訓練場」として提供が開始されました。

その後、1992年から2006年にかけて、住宅用地の一部返還や境界標の追加提供などが断続的に行われました。

1996年、SACO最終報告で条件付き返還が合意され、代替施設建設後に返還が進められることとなりました。

2011年7月31日、ギンバル訓練場は全面返還されました。

2012年からは、返還された土地の撤去工事が始まりました。

メースB基地

冷戦時代、アメリカ軍は共産圏への核抑止力として、沖縄県内4か所に核弾頭搭載可能な中距離弾道ミサイル「メースB」基地を配備しました。ギンバルには8基の発射台が設置され、メースBミサイルが配備されていました。

地下には核戦争を想定した頑丈なコンクリート施設が建設され、射程2,400キロ、広島原爆の70倍以上の威力を持つ核兵器が配備されていました。

沖縄返還を前に核兵器は撤去されたとされていますが、返還時にも地下の巨大なコンクリート構造物は残されたままでした。

日米地位協定により米軍には原状回復義務がなく、撤去費用はすべて日本の税金で賄われることとなりました。ギンバルのメース地下施設の撤去費用だけで、総額約1億5千万円、土地の土壌調査やクリーンアップ費用に241,132,500円が費やされました。

条件付き返還

ギンバル訓練場の返還は、SACO最終報告に基づき、ヘリコプター着陸帯の移設などの条件付きで進められました。

SACO最終報告の返還条件

代替施設としてヘリコプター着陸帯を金武ブルー・ビーチ訓練場に建設し移設。
代替施設として消火訓練施設及び泥土除去施設などをキャンプ・ハンセンに建設し移設。
返還は1997年度末までを目途とする。

金武町議会は、これらの移設による負担増大に強く反対していましたが、最終的には受け入れられました。

2009年、金武ブルー・ビーチ訓練場にヘリコプター着陸帯（LZスワン）が建設され、2011年にはキャンプ・ハンセンに泥土除去施設が提供されました。

2012年7月31日、ギンバル訓練場は返還されましたが、米軍の原状回復義務がないため、核兵器要塞の巨大なコンクリートバンカーの解体、土地の整備に莫大な費用がかかりました。

条件1. 金武ブルー・ビーチの新規ヘリ着陸帯建設

防衛省は、金武町に新たな負担を強いるSACOの条件付き返還が進まない状況を打開するため、説明会を開催し、返還が不可能であれば訓練が継続される旨を説明しました。

その後、金武町議会は新規ヘリパット建設に合意しました。2009年11月に新しいヘリパッドが建設されましたが、オスプレイの離着陸が大幅に増加し、実質的にオスプレイの着陸帯となっています。また、民間地に近い場所では、条件に反して旧着陸帯やその他の場所で離着陸が行われていることも指摘されています。

事件・事故

ギンバル訓練場では、過去に照明弾や信号弾の使用による原野火災が度々発生しています。

1981年12月23日：信号弾使用により原野火災発生、約1,500㎡焼失。
1986年6月4日：照明弾使用により原野火災発生、約80㎡焼失。
1988年9月21日：照明弾がサトウキビ畑に落下し、約2,258㎡焼失。同訓練場における照明弾使用訓練が禁止。
1992年9月16日：照明弾使用で原野火災発生、約80㎡焼失。

返還後の跡地開発

2011年7月に返還されたギンバル訓練場の跡地では、自然を生かしたウエルネス事業の開発が進められています。

2013年には、海洋療法児童リハビリセンター、フィッティングセンター、ヘルスケアセンター、診療クリニックなどが建設されました。

地下調査により温泉が湧出し、足湯が人気を集めています。

2012年には、スパリゾートホテルの建設に向け、マレーシアの開発業者と合意しました。海に面した土地約16ヘクタールを100年間賃借し、大規模なリゾート開発が予定されています。

参考項目

* 沖縄の米軍基地

もう一度検索