ギー・モレ

ギー・モレ：フランス社会党のリーダー、首相としての足跡

ギー・モレ（Guy Mollet、1905年12月31日 - 1975年10月3日）は、フランスの政治家であり、フランス社会党（SFIO）の有力なリーダーでした。彼は1956年から1957年まで首相（閣僚評議会議長）を務め、第四共和政の不安定な時代に重要な役割を果たしました。

生い立ちと初期の経歴

1905年、ギー・モレはフランス北部のノルマンディー地方、オルヌ県フレールで織物工の家庭に生まれました。ルアーヴルで教育を受け、教師としての道を歩み始めます。早くから政治に関心を持ち、（旧）フランス社会党（SFIO）に入党。党員として積極的に活動し、1928年にはパ＝ド＝カレー県党書記に選出されました。

第二次世界大戦とレジスタンス

1939年に第二次世界大戦が勃発すると、モレはフランス陸軍に志願しますが、ドイツ軍の捕虜となってしまいます。7ヶ月後に釈放されたものの、彼はレジスタンス運動に参加し、対独抵抗を続けました。その活動中、彼は3回もゲシュタポ（ドイツ国家秘密警察）に逮捕されるという危険な経験をしています。

戦後の政治活動

戦後、1944年にモレはパ＝ド＝カレー県から総選挙に立候補し、国民議会議員に当選しました。1946年には、社会党の重鎮であったレオン・ブルムの支持を得て、ダニエル・マイエールの後任として社会党書記長に選出されます。社会党内では左派を代表する存在であり、中道派との連携による社会主義イデオロギーの希薄化を懸念していました。しかし、現実には第四共和政下で、社会党は中道や中道右派との協力関係を維持しました。

モレは閣僚としても早くから活躍しており、1946年には副首相格の国務大臣として入閣。その後、1950年にルネ・プレヴァン内閣で欧州関係担当相、1951年にはアンリ・クイユ内閣で副首相、欧州評議会フランス代表、社会主義者グループ議長を歴任しました。また、1951年から1969年まで社会主義インターナショナルの副議長も務めています。

首相として

1956年の総選挙で、モレは中道左派勢力の結集を目指し、急進社会党（急進党）のピエール・マンデス＝フランス、フランソワ・ミッテランの民主社会抗戦同盟、ジャック・シャバン＝デルマスの社会共和派（ド・ゴール派）の一部と共和主義戦線を結成しました。アルジェリア問題の平和的解決を訴えましたが、共和主義戦線は過半数を獲得できず、マンデス＝フランスも共産党と人民共和派（MRP）の反対により政権を担うことができませんでした。そのため、ルネ・コティ大統領はモレを首相に任命し、ここにギー・モレ内閣が成立しました。モレ内閣は1956年2月から1957年5月まで約16ヶ月間存続し、第四共和政下では最長の政権となりました。

しかし、モレの首相在任期間は、スエズ紛争やアルジェリア問題といった国際的な危機への対応に追われることになります。

スエズ紛争

モレは国内問題に注力したいと考えていましたが、アルジェリア問題がそれを許しませんでした。さらに、エジプトのナセル大統領によるスエズ運河国有化宣言が、スエズ危機を引き起こし、国際的な緊張を高めました。

アルジェリア問題

アルジェリア問題は、フランス本国にも大きな影響を与え、国内政治を揺るがす要因となりました。

英仏合併計画

モレは、フランスとイギリスの合併を提案していたことが、2007年にイギリス側の公文書で明らかになりました。1956年にモレがイギリスを訪問した際、アンソニー・イーデン首相に「フランスとイギリスの合併」を打診したのです。イーデン首相がこれを拒否すると、モレは「イギリス連邦へのフランスの加盟」を提案。彼は「フランス国民はエリザベス女王を君主に戴くことに抵抗はない」と述べましたが、イーデンは「フランス国民が英国王を奉戴するのは難しいことを彼は理解できないようだ」と側近に語ったとされています。

この提案の背景には、当時のフランスが抱えていた複雑な状況がありました。第二次世界大戦の戦勝国でありながら、ナチス・ドイツに敗北したという屈辱感、戦後のスエズ動乱やインドシナ戦争、アルジェリア戦争による疲弊など、大国としての自信を失っていたのです。モレは、第二次世界大戦で戦勝国として活躍し、充実した福祉政策を展開していたイギリスに強い憧れを抱いており、それが「英仏合併計画」という形で現れたと考えられます。

ギー・モレは、激動の時代にフランス社会党を率い、首相として難題に立ち向かった政治家でした。彼の政策や提案は、今日のヨーロッパにも影響を与え続けています。

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