クェット・マシーレ

クェット・マシーレ：ボツワナの民主化と経済成長を導いた政治家

クェット・マシーレ（Sir Quett Ketumile Joni Masire, 1925年7月23日 - 2017年6月22日）は、ボツワナ共和国の第2代大統領として、同国の発展に大きく貢献しました。

教師から政治家へ

マシーレは、1949年から1955年まで中等教育学校で教員および校長として教鞭を執りました。1962年、彼は仲間たちと共にベチュアナランド民主党（後のボツワナ民主党、BDP）の設立に携わります。この党は、ボツワナの独立運動において重要な役割を果たすことになります。

1965年の選挙で、党首のセレツェ・カーマが首相に選出され、1966年の独立後にはカーマが大統領に就任。マシーレは副大統領としてカーマを支え、国政に深く関与しました。

大統領として

1980年7月13日にカーマ大統領が逝去すると、マシーレは同年7月18日の選挙で第2代大統領に選出されました。彼はカーマの政策をほぼ継承し、経済成長と民主主義の維持に尽力。特に、ダイヤモンド資源の開発による経済成長を背景に、教育、医療、インフラストラクチャーの整備を進め、国民の生活水準の向上に大きく貢献しました。

マシーレ政権下のボツワナは、民主的で非人種差別的な社会を維持し、アフリカ大陸の中でも安定した国として知られるようになりました。1991年には、その功績が認められ、エリザベス2世からナイトの称号を授与されています。

政治改革と退任

1994年、長期政権に対する批判や失業率の増大などから、ボツワナ民主党は選挙で議席を減らす結果となりました。議会の三分の一を占めた野党・ボツワナ国民戦線は、大統領の任期を5年、二選までとする法案を提出。マシーレはこの法案を承認し、1998年に大統領を退任しました。この決断は、ボツワナの民主主義をさらに成熟させる一歩となりました。

退任後の活動

大統領職を退任した後も、マシーレは南部アフリカ政界の長老として、積極的な外交活動を続けました。コンゴ民主共和国の内戦では調停者として紛争解決に尽力。また、2007年6月には、南部アフリカ開発共同体からレソトの政治的紛争を仲介するよう任命され、地域の安定に貢献しました。

死去

2017年6月18日、マシーレは首都ハボローネにあるボカマソ病院の集中治療室に入院し、同年6月22日に91歳でその生涯を閉じました。彼の死は、ボツワナ国民だけでなく、アフリカ全体にとっても大きな損失でした。

クェット・マシーレは、ボツワナの独立と発展に大きく貢献した指導者として、その名と功績は永く記憶されることでしょう。

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