セレツェ・カーマ

セレツェ・カーマ：ボツワナの父

セレツェ・カーマは、ボツワナ建国の父として知られる、ボツワナ共和国初代大統領です。1921年、英領ベチュアナランド（現在のボツワナ）で生まれ、ングワト族の王族として、幼い頃から非凡な運命を背負いました。

王族としての生い立ちと異文化結婚

4歳で王位を継承したカーマは、南アフリカと英国で教育を受けました。そして1947年、イギリス人女性ルース・ウィリアムズと結婚します。この結婚は、アパルトヘイト政策を敷く南アフリカだけでなく、伝統的なングワト族からも強い反発を受けました。王族の結婚は、一族内で行われるのが慣習だったからです。しかし、カーマは伝統的な集会であるコトラで国民を説得し、結婚を認めさせました。この結婚は、カーマの強い意志と民衆の支持を反映する出来事でした。

しかし、南アフリカの圧力により、イギリス政府はカーマに王位放棄を要求。帰国を許されず、彼はしばらくの間、英国で過ごしました。

独立運動とボツワナ建国

1956年、カーマは叔父との和解を経て王位を放棄し、ボツワナへ帰国。その後、ベチュアナランド民主党を結成し、独立運動を主導しました。彼の穏健な政策は国民の共感を呼び、1965年の選挙で圧勝。首相に就任し、翌1966年、ボツワナは独立を達成、カーマは初代大統領となりました。

ダイヤモンド鉱脈の発見と経済発展

独立時のボツワナは世界最貧国の一つでした。しかし、独立直後の1967年、オラパで世界最大級のダイヤモンド鉱脈が発見されます。カーマは、この好機を最大限に活用しました。彼は南アフリカのデ・ビアス社と開発契約を結び、ダイヤモンド鉱山の収益を教育、医療、インフラ整備に充てました。その結果、ボツワナは世界最速の経済成長を遂げます。

カーマのリーダーシップは経済発展にとどまりませんでした。彼は汚職に厳しく対処し、政府の腐敗を最小限に抑えました。また、人種間の融和を重視し、政府職員の「アフリカ化」を急進的に進めるのではなく、能力のある人材は継続して雇用しました。これは、多くのアフリカ諸国で起こった行政能力の低下を防ぐことに繋がりました。

穏健な外交と民主主義の堅持

カーマは、周辺の白人支配国家と慎重に外交関係を築き、アパルトヘイトには反対しつつも、経済発展には南アフリカ資本も活用しました。1979年には、南部アフリカ諸国の経済自立を目指すSADCC（南部アフリカ開発調整会議）の構想を提案しています。

内政においては、独立後一貫して複数政党制に基づく民主主義を堅持しました。ボツワナ民主党が圧倒的支持を得ていたとはいえ、アフリカ諸国では稀な、独裁政治への傾斜のない民主主義国家を築き上げました。

病と死

晩年は糖尿病などの持病に苦しみましたが、1980年、膵臓癌のため59歳で亡くなりました。彼の死は国民に大きな悲しみをもたらし、4000人を超える人々が葬儀に参列しました。

まとめ

セレツェ・カーマは、困難な状況の中、ボツワナを独立させ、世界最貧国から発展途上国へと導いた偉大な指導者でした。彼のリーダーシップ、穏健な外交、そして民主主義の堅持は、現代ボツワナ繁栄の礎となっています。彼の功績は、アフリカにおける国家建設の模範として、今後も高く評価されるでしょう。

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