クキ民族軍

クキ民族軍（KNA）

クキ民族軍（英語: Kuki National Army、略称: KNA）は、クキ民族機構（KNO）の軍事部門として機能する武装集団です。主にインド北東部とミャンマー北西部という、国境を跨ぐクキ族の居住地域において活動しています。彼らは、インドとミャンマーの両国に跨る地域でクキ族のための自治州を設立することを究極的な目標として掲げています。

歴史

KNAの設立は1988年に遡ります。設立当初から13年間にわたり、ミャンマー国軍と積極的に交戦し、20回に及ぶ戦闘を経験したと記録されています。2010年にミャンマーで総選挙が実施された後、クキ族内の様々な勢力からの働きかけを受け、組織はインドとミャンマーそれぞれの活動領域で軍事部門を分離する方針を採りました。このうち、ミャンマー側で活動を続ける部門は特にKNA(B)と略称されることがあります。

インドにおいては、比較的早い段階で政府との対話が始まりました。2005年8月にはインド中央政府と活動停止に関する協定を結び、さらに2008年5月にはインド中央政府およびマニプル州政府との間で正式な停戦協定を締結しました。この停戦状態は長らく維持されましたが、2023年に至り、後述する理由により破棄されることとなりました。

ミャンマーでの近年の活動

2021年にミャンマーで国軍によるクーデターが発生し、混乱が深まる中、KNA(B)はミャンマー国軍に対する武装闘争を再び活発化させました。彼らは他の民主派勢力や少数民族武装勢力と連携して戦線を構築しています。特筆すべき活動として、2023年10月にはカチン独立軍（KIA）と共同で作戦を展開し、戦略的に重要な拠点であるアウンジャ基地の占領に成功しました。また、同年12月には国民防衛隊（PDF）と共に、ザガイン地方域タム郡区に位置する国軍基地を奪取するなど、具体的な軍事行動を通じて抵抗運動に貢献しています。

インドでの近年の状況

インドのマニプル州では、長年にわたり多数派を占めるメイテイ族と、クキ族を含む丘陵部に居住する少数民族との間で民族間の緊張が高まっています。このような状況下、メイテイ族主導であるマニプル州政府は、2023年3月をもってKNAとの間で結ばれていた停戦合意を一方的に終了させる決定を下しました。州政府は、停戦破棄の背景として、KNAなどの武装組織がアヘンなどの非合法薬物生産に関与しているという疑惑を理由の一つに挙げています。

組織構造と指導層

KNAは、政治組織であるクキ民族機構（KNO）の軍事部門という位置づけです。KNOおよびKNAの創設者であるPS Haokip氏が、組織全体の代表および最高指揮官として政治部門を統括しています。

ミャンマーで活動する軍事部門KNA(B)には、以下のような主要な指導者がいます。

代表：Pu Letlam
副代表：Pu Chuchung
事務総長：Pi Ngangai
事務次長：Pu Khupmang
防衛総長：Pu Paulneo
情報・広報総長：Pu Seigin
内務総長：Pu Michael Sasat
情報部門長：Pu Letkholun
外務・調整総長：Pu Boipu
人権法・分析部門長：Pi Lalam

活動地域と戦力

前述の通り、KNAはインドとミャンマーにそれぞれ独立した軍事部門を置いています。ミャンマーで活動するKNA(B)の戦力は200人以上とされています。一方、主にインドに拠点を置くKNO傘下の複数の軍事組織を合計した総戦力は、約2000人規模と推定されています。

主な活動地域は以下の通りです。

インド
北東インド全般
マニプル州
ミャンマー
チン州（特にトンザン郡区）
ザガイン地方域（カムティ郡区、ホマリン郡区、レシ郡区、タム郡区、Myothitなどの郡区）

KNAの活動は、インドとミャンマー双方の国境地域における民族問題や政治情勢と深く結びついており、特に近年の両国における情勢変化の中で、その動向が注目されています。

もう一度検索