クサカゲロウ

クサカゲロウとは

クサカゲロウは、アミメカゲロウ目クサカゲロウ科に分類される昆虫の総称で、その中でも代表的な一種を指すこともあります。英語では「green lacewing」と呼ばれ、その名の通り、多くの種は黄緑色の体色をしています。成虫は、水滴のような形をした透明な翅を持ち、網目状の翅脈が特徴的です。

外観の特徴

成虫の体長は10mmから30mm程度で、触角は糸のように細長く、体は前後に伸びた形状をしています。翅は2対あり、前翅よりも後翅が小さいです。多くの種では翅に模様はありませんが、一部の種には斑紋が見られます。種の識別には、頭部の模様や雄の交尾器が用いられます。

生態

クサカゲロウは主に夜行性で、灯火によく集まります。成虫は、花粉や花蜜、アブラムシなどの半翅目昆虫が分泌する甘露などを食料とします。しかし、ヨツボシクサカゲロウなど、一部の種は肉食性で、アブラムシやカイガラムシを捕食します。また、クサカゲロウの翅には超音波を防ぐ組織があり、コウモリからの捕食を防ぐ役割を果たしています。

卵

クサカゲロウの卵は、長い柄を持ち、多くの場合、一つずつ産み付けられます。しかし、種によっては卵柄をコイル状に絡ませた卵塊として産み付けられることもあります。この卵は俗に「憂曇華（うどんげ）」と呼ばれますが、これは3000年に一度咲くという伝説の花に由来します。卵柄は、捕食者から卵を守るための防御手段として機能しています。

幼虫

幼虫は、柔らかい腹部と、細く鎌状に発達した大顎を持っています。足は3対の胸脚のみで、全体としてアリジゴクを細長くしたような形をしています。幼虫は肉食性で、アブラムシやハダニなどの小動物を捕食します。一部の種では、幼虫が背面に鉤状の毛を持ち、そこに植物の破片や捕食した昆虫の死骸などを付着させ、天敵から身を守ります。この行動は、1億1千万年以上前から存在していたと考えられています。

益虫としての側面

クサカゲロウの幼虫は、アブラムシやハダニ、コナジラミなどの農業害虫を捕食するため、古くから有用な天敵として知られています。海外では、ヒメクサカゲロウの一種が天敵資材として利用されています。日本でも過去には、本種が輸入され、活用されていました。

蛹

成長した幼虫（3齢幼虫）は、お尻から出す糸で繭を作り、その中で蛹になります。蛹は成虫になる直前に、大顎で繭を切り開き、歩いて脱出し、付近で脱皮して成虫になります。

分類

クサカゲロウは、世界中で約1300種が確認されており、大きく3亜科に分けられます。日本には、クサカゲロウ亜科とアミメクサカゲロウ亜科の2亜科、約45種が分布しています。

クサカゲロウ亜科 Chrysopinae

クサカゲロウ族 Chrysopini
クサカゲロウ属 Chrysopa
ヨツボシクサカゲロウ C. pallens
ナナホシクサカゲロウ C. septemmaculata
クサカゲロウ C. intima
クロミヤマクサカゲロウ C. nigra
ミヤマクサカゲロウ C. perla
クモンクサカゲロウ C. formosa
エゾクサカゲロウ C. sapporensis
モンクサカゲロウ C. lezeyi
プレシオクサカゲロウ属 Plesiochrysa
リュウキュウクサカゲロウ P. remota
セマダラナンヨウクサカゲロウ P. ramburi
オオクサカゲロウ属 Nineta
ヒメオオクサカゲロウ N. vittata
キタオオクサカゲロウ N. alpicola
オオクサカゲロウ N. itoi
クリソトロピア属 Chrysotropia
ムモンクサカゲロウ Ct. ciliata
ユメクサカゲロウ属 Nipponochrysa
マボロシクサカゲロウ Np. moriutii
クワヤマクサカゲロウ属 Kuwayamachrysa
キチジョウクサカゲロウ K. kichijoi
Cunctochrysa
シロスジクサカゲロウ Cu. albolineatoides
ニセコガタクサカゲロウ属 Pseudomallada
セボシクサカゲロウ Pm. prasinus
イツホシアカマダラクサカゲロウ Pm. cognatellus
ヨツボシアカマダラクサカゲロウ Pm. parabolus
ヒメニセコガタクサカゲロウ Pm. alcestes
フタモンクサカゲロウ Pm. formosanus
ミナミクサカゲロウ Pm. astur
クロヒゲフタモンクサカゲロウ Pm. ussuriensis
コガタクサカゲロウ属 Mallada
ヒメリュウキュウクサカゲロウ M. basalis
カオマダラクサカゲロウ M. desjardinsi
クラカタウクサカゲロウ M. krakatauensis
ヒメクサカゲロウ属 Chrysoperla
ヤマトクサカゲロウ Cp. nipponensis
クロズヤマトクサカゲロウ Cp. nigrocapitata
スズキクサカゲロウ Cp. suzukii
アカスジクサカゲロウ Cp. furcifera
キントキクサカゲロウ属 Brinckochrysa
ヒメキントキクサカゲロウ B. scelestes
キントキクサカゲロウ B. kintoki

ヒロバクサカゲロウ族 Ankyropterygini
ヒメヒロバクサカゲロウ属 Semachrysa
マダラクサカゲロウ S. decorata
マツムラクサカゲロウ S. matsumurae
ヒメマダラクサカゲロウ S. pulchella
ヒロバクサカゲロウ属 Ankylopteryx
ヒロバクサカゲロウ A. octopunctata
クロオビヒロバクサカゲロウ A. delicatula
ウスチャヒロバクサカゲロウ A. ferruginea
モンヒロバクサカゲロウ A. gracilis
ニセヒロバクサカゲロウ A. exquisita
フトヒゲクサカゲロウ族 Belonopterygini
フトヒゲクサカゲロウ属 Italochrysa
セアカクサカゲロウ I. japonica
オオフトヒゲクサカゲロウ I. nigrovenosa

アミメクサカゲロウ亜科 Apochrysinae

アミメクサカゲロウ族 Apochrysini
アミメクサカゲロウ属 Apochrysa
アミメクサカゲロウ Ap. matsumurae*



クサカゲロウは、その美しい外見だけでなく、農業害虫を捕食する益虫としても重要な役割を果たしています。

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