クサヨシ属 (Phalaris) について
クサヨシ属(
学名:Phalaris)は、
イネ科に属する植物の一群です。その分布範囲は非常に広く、
南極大陸を除くすべての大陸に自生しています。生育環境も多様で、海抜下から数千メートルの高地、湿地帯から乾燥地帯まで、様々な場所に生育しています。
特徴と利用
クサヨシ属の植物は、一部の種が牧草として利用されています。しかし、これらの植物には
アルカロイドが含まれており、家畜に有害な影響を及ぼす可能性があります。
牧草として利用される場合、家畜のファラリス中毒を避けるため、
アルカロイド含有量を低減させた品種が用いられています。
ファラリス中毒は、
クサヨシ属に含まれる
アルカロイドが原因で発生します。これらの
アルカロイドには、インドール核を持つものが少なくとも8種類、ホルデニン、グラミン、
ジメチルトリプタミン類などが含まれていると考えられています。
北米ではリードカナリーグラス(
クサヨシ)による死亡例は報告されていませんが、ニュージーランドでは
ヒツジの死亡例が報告されています。
Phalaris staggers と呼ばれる神経症状(立てない、ふらつき、頭を振るなど)も、これらの
アルカロイドが関与していると考えられています。反芻動物では、5-MeO-DMT が staggers の原因となりますが、馬には同様の症状は見られず、ブフォテニンとして排泄されることが確認されています。
ヒツジや
ウシなどの家畜にとって、グラミンは有害な物質です。グラミンは、脳や中枢神経系、その他の臓器に障害を引き起こし、最悪の場合、死に至る可能性があります。
クサヨシ(Phalaris arundinacea)、オニ
クサヨシ(Phalaris aquatica)、Phalaris brachystachys には、
ジメチルトリプタミン(N,N-DMT)、5-MeO-DMT、ブフォテニンなどの
アルカロイドが含まれていることが知られています。
クサヨシ属の
アルカロイド含有量は、個体間や生育環境によってばらつきがあります。
アルカロイドを高濃度に含む系統は毒性が高いため、牛や羊の放牧地としては避けられています。これらの系統には、Phalaris aquatica AQ-1 や P. brachystachys が含まれます。季節や天候も
アルカロイド濃度に影響を与え、特に秋や干ばつの時期には毒性が高まる傾向があります。また、放牧や草刈り後の再成長時にも
アルカロイドが増加することが示されています。
P. californica、
カナリークサヨシ(P. canariensis)、ヒメ
カナリークサヨシ(P. minor)、P. arundinacea と P. aquatica の雑種には、上記の
アルカロイドは発見されていません。
その他の利用
クサヨシ属のいくつかの種は、乾燥させてフラワーアレンジメントに使用されています。また、
カナリークサヨシは一般的に鳥の餌として利用されています。
アイルランドでは、
クサヨシが潜在的なバイオエネルギー源として研究されています。
主な種
Phalaris amethystina
Phalaris angusta
Phalaris aquatica - オニ
クサヨシ
Phalaris arundinacea -
クサヨシ
Phalaris brachystachys
Phalaris californica
Phalaris canariensis -
カナリークサヨシ
Phalaris caroliniana
Phalaris coerulescens
Phalaris commutata
Phalaris elongata
Phalaris lemmonii
Phalaris minor - ヒメ
カナリークサヨシ
Phalaris paradoxa - セトガヤモドキ
Phalaris platensis
Phalaris truncata
参考資料
USDA Plants Database
Grass Genera of the World
Jepson Manual Treatment
Erowid Phalaris Vault
* The genus Phalaris in Ayahuasca