ジメチルトリプタミン

ジメチルトリプタミン（DMT）とは

ジメチルトリプタミン（DMT）は、N,N-ジメチルトリプタミンとも呼ばれるトリプタミン系のアルカロイドで、自然界に存在する強力な幻覚剤です。熱帯・温帯の植物や一部のキノコ、特定のヒキガエル、哺乳類、ヒトの脳細胞、血球、尿など、様々な生物に分布しています。DMTは抽出または化学合成によって得られ、室温では透明、白、または黄色がかった結晶として存在します。

DMTの性質

DMTは、塩基性条件下では水に溶けにくい性質を持ちますが、フマル酸塩などの塩の状態では水に溶けやすくなります。溶液中では分解が速いため、空気や光から遮断し、冷凍保存することが推奨されます。

DMTの歴史

DMTを含む植物は、古代から南米のアマゾン地域で伝統的な儀式に用いられてきました。紀元前の遺跡からは、DMTを含む植物を吸引するために使用されたと思われる遺物が発見されています。特に、アヤワスカと呼ばれる飲料は、DMTとモノアミン酸化酵素阻害薬（MAOI）を含む植物を組み合わせたもので、シャーマンの儀式に不可欠なものとされてきました。

1931年に化学者リチャード・マンスケがDMTの合成に成功しましたが、当時の時点ではその精神作用は知られていませんでした。1957年には、精神科医ステファン・ソーラが自らへの注射で幻覚効果を確認し、その後、同僚にも投与実験を行いました。1965年には、ヒトの血液、尿、脳からもDMTが発見されました。

1971年の向精神薬に関する条約でDMTは規制対象となりましたが、近年では、その臨床応用に関する研究が再び活発化しています。

DMTの臨床研究

近年、DMTの単独投与による臨床試験が実施されるようになり、特にうつ病治療への応用が注目されています。イギリスでは、うつ病治療のためのDMT投与試験が承認され、心理療法と組み合わせることで、抑うつ的な思考の繰り返しを抑制する効果が期待されています。DMTの静脈投与は20分程度で効果が消失しますが、同様の治験が進められているシロシビンに比べて持続時間が短いという特徴があります。

アメリカの大学での予備的な研究では、DMTの静脈投与後、うつ病の評価点数が低下することが確認されています。また、カナダの製薬会社では、脳卒中患者に対するDMTの微量投与による脳神経の形成促進、ニコチン、アルコール、オピオイド依存症に対する治療効果の研究も進められています。

DMTの作用

DMTは、喫煙や注射によって摂取すると、数分以内に強力な幻覚作用が現れます。効果のピークは5～20分で、持続時間は30分程度と短いのが特徴です。経口摂取では、モノアミン酸化酵素によって分解されるため効果が現れませんが、MAOIとの併用でアヤワスカのように効果を発揮します。

初期の研究では耐性が生じないと考えられていましたが、短時間での繰り返し投与では生理的な耐性が確認されています。しかし、依存性については、ほとんど報告されていません。

DMTは、シグマ-1受容体に作用することが解明されており、この受容体を介して、低酸素ストレスの影響を緩和している可能性があります。また、従来、神経毒性があると考えられていましたが、最近の研究ではむしろ保護的な効果がある可能性も示唆されています。DMTが、哺乳類の脳に発生する神経伝達物質だという証拠が蓄積しており、内因性の幻覚剤として、臨死体験や通常ではない意識状態を説明できる可能性も考えられています。

DMTに関する実験・仮説

リック・ストラスマン博士の研究では、DMTを投与された被験者の半数近くが地球外生物に遭遇したと報告しています。彼は、DMTが人間の脳内の松果体で生成され、神秘的な体験や臨死体験と関連しているという仮説を立てています。また、テレンス・マッケナはDMTが異次元への扉を開くと述べています。

動物実験では、サルがDMTを自発的に摂取する行動が確認されています。

自然界におけるDMTの存在

内因性DMT

DMTは、アミノ酸のトリプトファンから生合成されます。ヒトメラノーマ細胞株での研究では、ペルオキシダーゼによる代謝を含めたDMTの生合成が確認されています。微量でも活性があるという発見から、内因性のDMTの役割が見直されています。哺乳類の脳にDMTが存在するという証拠は、外部からの投与なしに発生する幻覚や、臨死体験を説明する可能性を示唆しています。

植物

DMTは、クサヨシ属、デロスペルマ属、アカシア属、ヌスビトハギ属、オジギソウ属、ビロラ属、ボチョウジ属など、世界中の多様な植物に含有されています。また、ミカン属の植物にも微量に含まれており、昆虫忌避作用があると考えられています。ヤマハギの葉にもDMTが含まれており、茶葉の代用として利用されることがあります。

菌類

シロシビンを含むキノコであるセンボンサイギョウガサからもDMTが検出されています。

映画

2010年には、リック・ストラスマン博士によるDMTの臨床研究をテーマにしたドキュメンタリー映画『DMT―精神の分子』が制作されています。

まとめ

DMTは、古代から現代に至るまで、人間の意識や精神に深く関わってきた物質です。その特異な作用や、臨床応用への可能性は、今後の研究によってさらに明らかになることが期待されます。1400文字程度

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