カナリークサヨシ

カナリークサヨシ（カナリーグラス）

カナリークサヨシ（Phalaris canariensis）は、イネ科クサヨシ属に分類される一年草であり、カナリーグラスという別名でも知られています。その種子は、カナリーシードとして飼鳥家の間で広く利用されています。

分布

原産地は地中海沿岸地域、具体的にはアフリカ大陸北部やヨーロッパ南部です。和名や学名にカナリア諸島の名前が冠されていますが、これは固有種であることを意味するものではありません。ただし、カナリア諸島も原産地の一部であり、自然分布しています。

原産地以外にも、栽培されていたものが世界各地に逸出し、帰化植物として分布を広げています。日本へは江戸時代にカナリアの餌用として持ち込まれ、その後、野外に逸出したと考えられています。

特徴

道端などの乾燥した場所を好んで生育する、典型的な雑草です。草丈は0.6〜1.8m程度に成長し、根元から2〜6本の茎が分岐します。葉は先が細くなる形状で、長さは8.9〜25.4cm、幅は0.6〜1.9cm程度です。葉は柔らかく、両面とも無毛で、長さ8mm程度の葉舌を伴います。

春から夏にかけて、茎の頂点に円錐花序を一本だけつけます。花序の全長は7.6〜40.6cmで、3〜16程度の枝分かれがあり、それぞれの枝の長さは1.2〜3.8cm程度です。包頴は白緑色で、中脈が濃い緑色をしています。

近縁種

ヒメカナリークサヨシ (Phalaris minor)：本種に非常によく似ており、専門家でも見分けるのが難しいほどです。
クサヨシ (Phalaris arundinacea)：穂が細長く、水辺に生息するため、性質も外観も大きく異なります。むしろヨシに似た外見をしています。

人間との関係

種子は光沢のある茶色をしており、タンパク質や脂肪分を豊富に含んでいます。「カナリー」という名前は、この種子がカナリアの餌として利用されてきたことに由来します。現在でも、カナリアをはじめとする愛玩鳥であるフィンチの飼料として広く利用されています。

フィンチ飼料用の種子の主な生産国はカナダであり、世界の消費量の約8割をカナダが生産し、その8割がサスカチュワン州で生産されています。

カナリークサヨシの種子は、他の穀物と比較して脂肪分が非常に多く含まれています。そのため、フィンチの種類や個体によっては、この種子を特に好むものもいます。しかし、この種子のみを餌として与えると、脂肪過多症を引き起こし、健康を害する可能性があります。また、小鳥用の餌としては価格が高くなりすぎるという商業的な理由から、通常はアワ、ヒエ、キビなどと混ぜて販売されます。この混合飼料は「四種混合」と呼ばれます。

カナリア諸島、イタリア、北アフリカなど一部地域では、雑穀として食用にも利用されますが、それ以外の地域で食用とされることはほとんどありません。しかし、この種子に含まれる脂肪分の84%が不飽和脂肪酸であるため、将来的にはマーガリンの原料など、人工脂肪への活用が期待されています。

種子から工業的に精製されたデンプンは、綿織物や絹製品の仕上げにも使用されます。このデンプンは、化粧品などへの応用も期待されています。

化学

カナリークサヨシは、ジメチルトリプタミン (DMT) やグラミンといった化学物質を含有しています。

脚注

[外部リンク]

Alternative Field Crops Manual
Canary Seed Image at www.canaryseed.com
International Marketing of Canary Seed
北海道ブルーリスト - カナリークサヨシ 北海道環境生活部環境局 自然環境課 特定生物グループ

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