クサリトラザメ

クサリトラザメ (Scyliorhinus retifer)

クサリトラザメは、トラザメ属に属する小型のサメで、主に西部大西洋に生息しています。その特徴的な網目模様とともに、成体は体長が約50 cmに達し、礫底に暮らすことが一般的です。この種は卵生であり、繁殖力も強いことから、IUCNはその保全状況を「軽度懸念」と評価しています。

分布

このサメは、西部大西洋の大陸棚外縁や上部大陸斜面に多く見られ、ジョージバンクからフロリダ半島、メキシコ湾、さらにはニカラグアまで広がっています。特にチェサピーク湾周辺では個体数が豊富です。

クサリトラザメは水温が8.5度から11.3度の環境を好み、北部では深度36〜230m、南部では460mより深い深海で生活しています。これらの条件の下で、長距離移動は見られないとされています。その生息域は、特に冬季の水温に密接に関連しており、温水の帯が出現することで本種の生活が可能となっています。

形態

クサリトラザメは最大で59 cmに成長し、細長く楔型の体型をしています。吻は先端が丸くなっており、最初の背鰭は腹鰭の後方から生えています。第二の背鰭は第一の約半分のサイズです。背面は赤褐色で、黒から暗褐色の鎖状模様が特徴的です。腹面はやや黄色がかっています。

歯の配列は、上顎には21〜26本、下顎には20〜22本あり、正中の歯列も存在します。皮膚の質感は滑らかで、平たく細い皮歯が数本の水平隆起とともに見られます。

生態

このサメは底生の不活発な種で、主に海底に留まっています。日中は岩の隙間や大型のハナギンチャクに身を隠し、背面の模様で海底の礫に擬態していると考えられています。主な食事はイカや硬骨魚、多毛類、甲殻類などであり、成体は幼体に比べて魚を多く捕食します。

また、2005年にはメキシコ湾の深海で蛍光を放つクサリトラザメが観察されたこともあり、この現象の理由は不明です。

繁殖

クサリトラザメの繁殖特性はハナカケトラザメに似ており、雄の精液の生産は成熟したクラスパーの成長と関連しています。雌も卵胞の発達は卵殻腺の成長に依存し、成熟には18 mm以上である必要があります。性成熟する体長は北方では雌が35 cm、雄が38 cm、南方ではそれぞれ52 cmと50 cmとされています。

交尾時には、雄が雌に噛み付いて固定し、体を巻きつけます。この交尾後、雌は長期間精子を保持でき、産卵は最大843日後に始まる可能性がありますが、やがて発育不良の卵が生じることもあります。

卵は海底の垂直な構造物に産み付けられ、輸卵管に1対の卵を持ち、数分から数日間隔で産卵されます。卵殻は最初は柔らかく、やがて硬化し、白い縞模様が入った淡い飴色に変化します。

発生

胚の発生には水温にもよりますが、約8〜12ヶ月かかります。成長の段階において、10 mmで鰓弓が明確になり、21 mmでは胸鰭と腹鰭の原型が出現します。さらに、58 mmでは鰭膜が消失し、最後には100〜110 mmで孵化を迎えます。

人との関わり

クサリトラザメはその美しい模様から観賞用に人気があり、一部の水族館では飼育されています。その小型の体型は人に危害を加えないため、漁業的には特に重要ではありません。IUCNによる評価では、前述の理由から「軽度懸念」とされ、特に北部では個体数が増加傾向にあるとされています。

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