クライスラー・ビルディング

クライスラー・ビルディングの魅力

クライスラー・ビルディング（Chrysler Building）は、アメリカのニューヨーク市、マンハッタン区のタートル・ベイにそびえ立つ象徴的な超高層ビルです。この建物はその優美なデザインによって、ニューヨークの摩天楼の中でも特に目を引く存在となっています。アール・デコ様式を傾けたデザインは、アメリカの都市景観において特別な位置を占めており、アメリカ合衆国のシンボルの一つともされています。

概要

クライスラー・ビルディングは、レキシントン・アベニューと東42丁目の交差点に位置し、グランド・セントラル駅の近くにあります。このビルは、ウィリアム・ヴァン・アレンが手がけ、ウォルター・クライスラーの自動車メーカーの本社ビルとして建設されました。建物自体は1930年に完成しましたが、当初からアール・デコ様式の装飾が施された内装や外観が特徴です。特に自動車に関連するデザインが随所に取り入れられている点も、このビルの魅力を際立たせる要素となっています。クライスラー社が本社として使用していたのは1950年代半ばまでで、その後は様々な投資会社や不動産会社の手に渡りました。

2008年にはアラブ首長国連邦のファンドが所有権の75％を取得しましたが、2019年にはニューヨークの不動産開発業者とのジョイントベンチャーにより新たな所有者が登場します。そして2023年にはシグナ・ホールディングスが破産し、所有権が再び移転する見込みとなっています。アメリカ建築家協会による「アメリカの人気建築物」で第9位に選ばれていることからも、建築史における重要性が伺えます。

歴史と建設

クライスラー・ビルディングの建設は、1928年9月19日に始まりました。この頃、ニューヨークでは世界一高い建物を巡る競争が盛況を極めていました。特にウォール街のウォールタワーとの競争は熾烈で、工事は驚異的なスピードで進行しました。平均して1週間で4階分の高さを増していく計画ながら、施工中に工事関係者が命を落とすことはありませんでした。

当初の設計では246メートルでの完成を目指していましたが、ライバルのウォールタワーが260メートルに計画を変更したことで、ウォルター・クライスラーは設計変更を指示し建物の高さを282メートルにしました。しかし、ウォールタワーが急遽283メートルに変更したため、さらに持ち上げる必要が生じます。そのため、ウィリアム・ヴァン・アレンは秘密裏に38メートルの尖塔の製造を始め、1930年5月20日にはこの尖塔を追加してクライスラー・ビルディングの最終的な高さは319メートルとなりました。これにより、クライスラー・ビルディングは世界一の高層ビルとしての座を得ることになりますが、翌年にはエンパイア・ステート・ビルディングが完成し、その座を奪われることになります。

しかし、クライスラー・ビルディングは38年間も世界2位の座を維持し続け、シカゴのジョン・ハンコック・センターが登場するまで、その地位を譲ることはありませんでした。また、尖塔の追加によってエッフェル塔の高さも超え、当時の世界で最も高い建物となったことも特筆すべき点です。クライスラー・ビルディングは、アメリカの1920年代の繁栄を象徴する建物として、今もなお観光客を魅了し続けています。

結論

ニューヨークの超高層ビル群の中でも特別な存在であるクライスラー・ビルディングは、ただのビルではなく、アール・デコ建築の真髄を示す作品です。その美しさや歴史的価値、また建設時のエピソードは、訪問者に深い感動を与え、文化的、建築的な重要性を今に伝えています。このビルは、都市の発展を象徴する存在でもあり、未来への希望を切り拓くシンボルとしての役割を果たしているのです。

もう一度検索