クライスレリアーナ

クライスレリアーナ 作品16

ロベルト・シューマンが1838年に作曲したピアノ曲集『クライスレリアーナ』作品16は、彼の代表作の一つであり、全8曲から構成されています。この作品は、E.T.A.ホフマンの音楽評論集『クライスレリアーナ』に触発されて作られました。シューマンは、ホフマンの作品に登場する架空の音楽家クライスラーに自身を重ね、また恋人であったクララへの想いも込めて作曲したと言われています。

この曲集は、シューマン特有のピアノ語法がふんだんに盛り込まれており、急-緩-急-緩という対比的な構成が特徴です。各曲は独立した性格を持ちながらも、全体を通して共通のモチーフや曲想が用いられ、統一感のある作品となっています。1850年には改訂版が出版されており、初版とは形式的に異なる部分も存在します。

各曲の構成

第1曲 Äußerst bewegt（激しく躍動して）ニ短調
激しい分散和音が駆け巡る主部と、穏やかな中間部から構成されます。3連符が特徴的で、情熱的なエネルギーが感じられます。

第2曲 Sehr innig und nicht zu rasch（たいへん心をこめて速すぎずに）変ロ長調
牧歌的な雰囲気を持つ曲です。2つの異なる性格を持つインテルメッツォが挿入されており、緩やかながらも変化に富んだ構成となっています。初版と改訂版では構成が大きく異なります。

第3曲 Sehr aufgeregt（激しく駆り立てるように）ト短調
鋭いリズムと3連符が特徴的な曲。中間部では、レガートで歌うような旋律が対照的に現れます。

第4曲 Sehr langsam（きわめて遅く）変ロ長調
ゆったりとした間奏曲風の音楽で、瞑想的な雰囲気が漂います。

第5曲 Sehr lebhaft（非常に生き生きと）ト短調
付点リズムが特徴的な、情熱的な曲です。対位法的な展開が緊張感を高め、中間部では情熱的な問いかけと答えが繰り広げられ、クライマックスを迎えます。

第6曲 Sehr langsam（きわめて遅く）変ロ長調
内声部に瞑想的な旋律が現れる曲です。連符を含む鋭いリズムが、何かを訴えかけるようです。中間部は静かな盛り上がりを見せ、冒頭の主題が再現されてすぐに終わります。

第7曲 Sehr rasch（非常に速く）ハ短調～変ホ長調
激しいアルペッジョの下降音型が繰り返され、熱狂的な雰囲気を醸し出します。中間部はフガートで開始されますが、すぐに主部の熱狂へと戻ります。その後、フィナーレへと続く印象的な部分が展開されます。

第8曲 Schnell und spielend（速くそして遊び心をもって）ト短調
ユーモラスな曲想で、曲集を締めくくります。執拗なリズムの反復が特徴的で、盛り上がりを見せますが、最後は静かに終わります。この曲の主題は、後にシューマンの交響曲第1番「春」に転用されています。


『クライスレリアーナ』は、シューマンのピアノ音楽の魅力を余すところなく伝える傑作です。情熱的なエネルギーと内省的な深さを併せ持ち、聴く者を魅了します。各曲の個性を味わうとともに、全体としての構成の美しさを堪能できるでしょう。

クライスレリアーナ作品16の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
クライスレリアーナ - ピティナ・ピアノ曲事典

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