クラウス・フォン・ビューロー

クラウス・フォン・ビューローとは

クラウス・フォン・ビューロー（Claus von Bülow, 1926年8月11日 - 2019年5月25日）は、デンマーク出身のイギリスの法律家、そして演劇評論家として知られています。彼は、妻マーサ・フォン・ビューロー（愛称サニー）に対する殺人未遂容疑で起訴されたものの、最終的には無罪を勝ち取りました。この事件は、メディアでセンセーショナルに報道され、世間の注目を集めました。

生い立ちとキャリア

クラウスは、クラウス・セシル・ボルベア（Claus Cecil Borberg）としてコペンハーゲンに生まれました。ビューローは母方の苗字で、ドイツ貴族の家系に連なります。指揮者ハンス・フォン・ビューローは親類にあたります。父スヴェン・ボルベアは劇作家であり、ナチスの共鳴者として知られていました。

クラウスはケンブリッジ大学トリニティ・カレッジを卒業後、1950年代に弁護士として活動を開始しました。その後、石油王J・ポール・ゲッティの助手となり、ゲッティからは温厚で忍耐強い人物と評され、時にはゲッティの罪をかぶることもあったと言われています。ゲッティとの関係は1968年まで続きました。

1966年6月、クラウスはサニーと結婚し、「クラウス・フォン・ビューロー」となりました。サニーにとっては再婚であり、彼女には2人の連れ子がいました。クラウスとサニーの間にも子供が生まれ、結婚生活は順調に進んでいるように見えました。

殺人未遂事件とその裁判

1982年、ロードアイランド州ニューポートの自宅で、クラウスは妻サニーの殺害を企てた容疑で起訴されました。原因は、サニーへのインスリンの過剰投与とされました。サニーは突発性低血糖症を患っており、インスリンを常備していました。しかし、投与されたインスリンの量は、通常の10倍以上であったとされています。

裁判はクラレンドン裁判所で行われ、家政婦やサニーの子供たちが、クラウスの鞄からインスリンの注射器を発見したと証言しました。メディアは事件をセンセーショナルに報道し、世論はクラウスの有罪を信じました。しかし、当時のインスリンは要冷蔵であり、鞄に入っていたインスリンの有効性に疑問が残りました。また、注射器にはインスリンが入っていたものの、使用された形跡はありませんでした。しかし、一審では有罪判決が下され、クラウスは懲役30年を言い渡されました。

その後、クラウスは著名なハーバード大学教授アラン・ダーショヴィッツを雇い、控訴しました。ダーショヴィッツとその弁護団は、一審で有力とされた証拠や証言を覆し、警察の捜査のずさんさを証明しました。また、世論も次第にクラウスを支持するようになりました。

1984年、クラウスは無罪となり、1985年の再審でも全ての容疑について無罪となりました。しかし、サニーの家族はクラウスの犯行を信じ続けました。ビューロー夫妻の娘コージマ・フォン・ビューローは、公判で父の無実を証言したために、母方の祖母であるアニー・ローリー・エイトケンの遺産相続人から除外されました。さらに、クラウスの2人の養子（サニーの連れ子）は、5600万ドルの損害賠償を求めてクラウスを提訴しました。結果として、クラウスはサニーの個人財産（7500万ドル）に対する相続権をすべて失いました。その代わりに、コージマが相続権を回復することとなりました。

その後の生活と事件の映画化

無罪判決後、クラウスはロンドンに移り住み、美術批評や演劇評論を行いながら生活しました。サニーはニューヨークの病院で、28年間昏睡状態が続いた後、2008年12月に亡くなりました。

この事件を題材にしたアラン・ダーショヴィッツの著書『運命の逆転』は、後に映画化され、ジェレミー・アイアンズがクラウスを演じました。アイアンズはこの演技でアカデミー主演男優賞を受賞しました。

関連文献

* Reversal of Fortune : Inside the Von Bulow Case ISBN 978-0-39453-903-4

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