クラミドモナス

クラミドモナスは、主に湖や沼の水辺といった淡水環境に生息する、単細胞性の鞭毛を持つ緑藻類の属です。この属には500を超える種が確認されていますが、一般的にクラミドモナスという名称で呼ばれる際には、特に生物学の研究分野で広く用いられているモデル生物、コナミドリムシ（学名：Chlamydomonas reinhardtii）を指すことが大半です。

C. reinhardtiiは、細胞の基本的な仕組みや機能、特に鞭毛が動くメカニズム、細胞内小器官である葉緑体のダイナミクス、生物の発生過程、そして遺伝子の働きに関する研究において、非常に重要なモデル生物として利用されています。この生物の特筆すべき特性の一つに、光に反応してイオンを透過させるチャンネル、例えばチャンネルロドプシンといった光感受性のイオンチャネルを持つことが挙げられ、これも研究対象となっています。

また、クラミドモナスの仲間にあたるChlamydomonas nivalisという種は、雪解け期の雪面に生息し、その色素によって雪面を赤やピンクに色づける「ウォーターメロン・スノー」と呼ばれる現象を引き起こす原因生物としても知られています。

クラミドモナスの形態的な特徴としては、群体を作らず単独で生活する単細胞生物である点が挙げられます。細胞の形は球状から滑らかな楕円形で、大きさはおよそ10マイクロメートルから30マイクロメートルの範囲です。細胞の先端部からは、長さがほぼ等しい2本の鞭毛が生えており、これを使って水中を活発に泳ぎ回ります。細胞の外側は硬い細胞壁に覆われているため、アメーバのように形を変える運動はしません。光合成を行う葉緑体は、細胞内に1つまたは2つあり、その形状は種によって異なり、杯型、袋状、帯状など様々です。葉緑体が2つの種では、細胞の左右に配置される場合と、上下に配置される場合があります。

分子を用いた系統解析が進んだ結果、これまで形態的な特徴に基づいて便宜的にまとめられてきた従来のクラミドモナス属は、生物学的な系統としてはまとまりのない多系統群であることが明らかになっています。これは、鞭毛を持つ単細胞性の緑藻類の中から、似たような形態のものが「クラミドモナス様生物の総称」として括られてきた経緯によるものです。厳密な系統分類としては人為的なグループと言えますが、見た目に基づく区分は実用的な面も多く、今後も一般的な呼称として使われると考えられます。現代の分子系統分類では、以前クラミドモナスとされていた生物群は、緑藻類のボルボックス目に属する様々な科の中に分散して位置づけられています。

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