クラレンス・ハウス

クラレンス・ハウス：イギリス王室の歴史を刻む邸宅

クラレンス・ハウスは、イギリス・ロンドン中心部のマル通りに位置する、風格あるイギリス王室の邸宅です。セント・ジェームズ宮殿に隣接しており、宮殿と庭を共有する立地も魅力の一つです。

この邸宅は、1825年から1827年にかけて、建築家ジョン・ナッシュの設計により建造されました。依頼主は当時クラレンス公であったウィリアム王子で、後のウィリアム4世です。バッキンガム宮殿が完成する前、セント・ジェームズ宮殿が狭すぎたため、ウィリアム4世はこのクラレンス・ハウスを居住地として選びました。

その後、クラレンス・ハウスはウィリアム4世から妹のオーガスタ・ソフィア王女、さらにヴィクトリア女王の母であるケント公爵夫人ヴィクトリアへと受け継がれていきます。ヴィクトリア女王の第4子、アルフレッド王子が1900年に亡くなるまで使用したのち、アーサー王子が1942年に亡くなるまで住まいとしていました。第二次世界大戦中のロンドン大空襲で被害を受けた後も、赤十字社やセント・ジョン・アンビュランスの本部として使用され、戦後にはエリザベス2世（当時王女）とフィリップ殿下が住まいとしていました。1950年にはアン王女がここで誕生しました。

1952年にジョージ6世が崩御すると、翌年にはエリザベス王太后とマーガレット王女がクラレンス・ハウスに移り住みました。その後、二人はケンジントン宮殿へ移りましたが、約50年にわたるエリザベス王太后の居住はクラレンス・ハウスの歴史に大きな足跡を残しました。

2002年にエリザベス王太后が亡くなると、大規模な改修工事が行われ、2003年にはチャールズ皇太子（現在のチャールズ国王）が住まいとしてこの地に移りました。内装はインテリアデザイナー、ロバート・カイムによって設計され、建物全体が美しく再生されています。外装も修復され、クラレンス・ハウスはかつての輝きを取り戻しました。

クラレンス・ハウスは、ウィリアム王子（2011年結婚まで）やヘンリー王子（2003年から2012年）も公邸として使用していました。現在ではチャールズ国王とカミラ王妃の公邸として使用され、イギリス王室の重要な拠点となっています。

建物は地下室と屋根裏を除き4階建てで、淡い色の化粧しっくいで覆われています。長年にわたる改修により、ナッシュのオリジナル構造はほとんど残っていないものの、歴史的建造物としてイギリス指定建造物のグレードIに指定されており、その歴史的価値と王室との深い繋がりは、多くの人々を惹きつけています。

近年では、チャールズ国王がクラレンス・ハウスでレセプションを開催するなど、王室行事の会場としても利用されています。毎年8月には一般公開も行われ、その歴史と風格を間近に感じることができる機会も提供されています。クラレンス・ハウスは、単なる邸宅を超え、イギリス王室の歴史と伝統を象徴する場所と言えるでしょう。

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