セント・ジェームズ宮殿

セント・ジェームズ宮殿

セント・ジェームズ宮殿（St. James's Palace）は、ロンドンのシティ・オブ・ウェストミンスターに位置し、イギリスで最も古い宮殿の一つです。この宮殿は、セント・ジェームズ・パークの北側、ペル・メルにあり、歴史的な役割を果たしてきました。

歴史的背景

セント・ジェームズ宮殿の建設は、イングランド王ヘンリー8世の指示により、かつてハンセン病患者のための病院があった場所に始まりました。新たな宮殿はテューダー様式の赤煉瓦を用いて建設され、4つの中庭が特徴的です。宮殿の北側には、多角形の小塔と門番小屋が今でも残っており、その外観は当時の面影を今に伝えています。

1698年から1737年にかけて、ホワイトホール宮殿が火災で使用できなくなったため、セント・ジェームズ宮殿はロンドンの王家の主要な居所となり、ステュアート王家にとって行政の中心地となりました。ここでは、多くの歴史的な出来事が起こりました。メアリー1世がこの宮殿で亡くなり、彼女の心臓や内臓は王室礼拝堂に埋葬されています。また、エリザベス1世はスペインのアルマダ艦隊が進撃する間、ここで夜を過ごしたと言われています。チャールズ1世は、処刑の前夜にこの宮殿に滞在したことでも知られており、その静かな夜が彼にとっての最後の時となりました。

オリヴァー・クロムウェルは、宮殿を共和制時代に兵舎として使用しました。その後、ハノーヴァー王家の最初の3代の王たちは他のヨーロッパの王家と比べると控えめなこの宮殿を、ロンドンでの公式 residence として利用し続けました。

1725年、作家ダニエル・デフォーはこの宮殿を「安っぽくてみすぼらしい」と評しましたが、1809年には火災に見舞われ、王家の私室の一部が損傷を受けました。以降、宮殿は公式行事や王族の健診用に使われる場所としての役割が変わっていきました。ヴィクトリア女王が1837年に他の居所に移ったことで、セント・ジェームズ宮殿の住居としての役割は終焉を迎えましたが、重要な政府の公式行事や式典に使われるまま残りました。

現在の使用

現在のセント・ジェームズ宮殿は、イギリス王室の公的な住所として機能し続けています。新任の大使が国王または女王に信任状を奉呈する際、名目上は「セント・ジェームズ宮廷の下」に派遣されることになっています。2022年9月8日にエリザベス2世が崩御した2日後、王位継承評議会が開催され、チャールズ3世の即位が発表される場ともなりました。

この宮殿は、アン王女とアレクサンドラ王女のロンドンにおける居所でもあります。宮殿の建物は複雑に構成されており、各部屋は様々な機能を持っています。特に注意すべきは、イニゴー・ジョーンズが設計したクイーンズ・チャペルで、宮殿に隣接し美しい建築物として知られています。

さらに、セント・ジェームズ宮殿は宮内省から派遣された護衛兵が常駐するロンドンの数少ない場所の一つです。このように、歴史と伝統に彩られたセント・ジェームズ宮殿は、今なおイギリスの王室と深く結びついた特別な存在となっています。

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