クリスタリン

クリスタリン：水晶体の透明性を支えるタンパク質

クリスタリンは、動物の眼にある水晶体という器官に存在するタンパク質の一種です。水晶体の3分の1から2分の1を占め、その機能は、主に水晶体の透明性維持と光の屈折能の向上に大きく関わっています。哺乳類においては、α、β、γの3種類のクリスタリンが混在しており、それぞれが異なる役割を果たしていると考えられています。

クリスタリンの起源と多様な機能

興味深いことに、クリスタリンは進化の過程で、本来とは異なる機能のタンパク質が流用されて誕生したと考えられています。例えば、ヒトのα-クリスタリンは、熱ショックタンパク質と非常に高い配列類似性を示します。これは、もともと異なる機能を持っていたタンパク質が、水晶体タンパク質として新たな役割を獲得したことを示唆しています。

クリスタリンの各サブタイプは、それぞれの機能を持ちます。α-クリスタリンは、他のクリスタリンであるβ-クリスタリンやγ-クリスタリンの機能を補助するシャペロン機能を持ちます。変性したβ-クリスタリンやγ-クリスタリンを本来の状態に戻し、それらが凝集するのを防ぐことで、水晶体の透明性を維持することに貢献します。一方、β-クリスタリンとγ-クリスタリンは、主に水晶体の透明性の維持と、光の屈折率を高める役割を担っています。ヒトの水晶体では、α-クリスタリンが約45%、β-クリスタリンが約20%、γ-クリスタリンが約35%を占めています。

クリスタリンの構造解明の難しさ

クリスタリンの立体構造の解明は、長らく困難を極めてきました。その理由は、クリスタリンを結晶化することが非常に難しい点にあります。しかし、近年になって、α-クリスタリンとγB-クリスタリンの構造解明に大きな進展が見られ、その詳細な機能解明に繋がることが期待されています。

クリスタリンと白内障

[水晶体]]細胞は発生の過程でクリスタリンで満たされると、他の機能を失い、クリスタリンは生涯にわたって交換・補充されません。そのため、クリスタリンの機能不全は、深刻な視覚障害の原因となります。α-クリスタリンのシャペロン機能が低下し、クリスタリンが凝集すると、水晶体の透明度が低下し、白内障を引き起こします。クリスタリン凝集の原因の一つとして、α-クリスタリンに含まれるアスパラギン酸の[[ラセミ化]が挙げられています。

クリスタリンの名前の由来と混乱

興味深いことに、「クリスタリン」という名称は、水晶体タンパク質以外にも使われた歴史があります。1826年に、インディゴを加熱することで得られた化合物が「クリスタリン」と命名されましたが、後に「アニリン」という名称に統一され、現在では使われていません。このため、クリスタリンという名前には、歴史的な経緯による混乱が存在します。

まとめ

クリスタリンは、水晶体の透明性と機能に不可欠なタンパク質です。その起源、機能、そして白内障との関連性など、多くの研究がなされ、その理解は深まっています。しかし、未だに解明されていない部分も多く残されており、今後の研究によって、さらにその詳細が明らかになることが期待されます。

もう一度検索