アスパラギン酸

アスパラギン酸：性質、生合成、工業生産、そして神経系における役割

アスパラギン酸は、2-アミノブタン二酸という化学式を持つアミノ酸の一種です。略号はAspまたはDで、L体とD体の光学異性体が存在します。アスパラガスから発見されたことからその名が付けられ、酸性極性側鎖アミノ酸に分類されます。

アスパラギン酸の性質

L-アスパラギン酸は、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の1つであり、非必須アミノ酸として知られています。グリコーゲン生産性も持ち、独特のうま味成分として食品にも利用されています。水への溶解度は温度に依存し、高温になるほど溶解度が高まります。一方、エタノールやジエチルエーテルには溶けません。等電点は2.77です。致死量はLD50で16g/kgと報告されています。

アスパラギン酸の生合成

アスパラギン酸は、生体内でクエン酸回路の中間体であるオキサロ酢酸から合成されます。この反応は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼという酵素が触媒し、グルタミン酸のアミノ基がオキサロ酢酸に転移することでアスパラギン酸とα-ケトグルタル酸が生成されます。


オキサロ酢酸 + L-グルタミン酸 → L-アスパラギン酸 + α-ケトグルタル酸

アスパラギン酸の工業生産

工業的には、フマル酸とアンモニアを原料として、大腸菌由来のアスパルターゼを用いて生産されます。大腸菌はκ-カラギーナンで固定化され、バイオリアクターを用いた回分法によって効率的にアスパラギン酸が製造されています。

アスパラギン酸の神経系における役割

アスパラギン酸は、中枢神経系において重要な興奮性神経伝達物質として機能しています。大脳皮質、小脳、脊髄などに存在し、NMDA受容体に対してアゴニストとして作用します。グルタミン酸、γ-アミノ酪酸(GABA)、グリシンと共に、アミノ酸系の神経伝達物質として神経細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしています。

まとめ

アスパラギン酸は、食品のうま味成分としての役割に加え、生体内の様々な代謝経路や神経伝達物質として重要な役割を果たしています。その性質や生合成、工業生産、そして神経系における機能を理解することは、生命科学や食品科学において重要です。今後の研究により、アスパラギン酸の新たな機能や応用が明らかになる可能性があります。

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