クリストファー・ウィンター

クリストファー・ウィンター

クリストファー・ウィンターは、18世紀初頭の「海賊の黄金時代」末期、およそ1716年から1723年にかけてカリブ海域で活動したイギリス人海賊です。彼の名は、悪名高い海賊エドワード・イングランドを海賊稼業へと誘った人物として歴史に記録されています。

彼のキャリアの初期については詳しいことは分かっていませんが、1717年9月5日にイギリス国王ジョージ1世が発布した、海賊に対する恩赦令は、ウィンターのその後の人生に大きな転機をもたらしました。この恩赦令は、布告から1年以内に投降し、海賊行為から足を洗うことを誓った者に対して、過去の罪を問わないというものでした。多くの海賊がこれに応じ、ウィンターもまたこの恩赦を受け入れた一人でした。

しかし、恩赦による平穏な生活は長くは続きませんでした。ウィンターは、かつての仲間であるニコラス・ブラウンと組んで、間もなく再び海賊行為を開始します。彼らはその後、キューバにいたスペイン植民地総督の元に身を投じるという、異例の行動をとりました。この投降が、後の彼らの活動の拠点となるスペイン領へと繋がります。

1722年、ウィンターとブラウンはトリニダード（現在のトリニダード・トバゴ）を拠点とし、再び大規模な略奪を開始しました。彼らはトリニダードから出航し、ジャマイカの北海岸沖で活動するイギリスの船舶や、沿岸部に広がるプランテーションを次々と襲撃し、財産を奪いました。この時期の彼らの活動は極めて残虐であり、多くの被害者を生み出しました。

特に凄惨だったのは、ジャマイカのセント・アン地域での出来事です。彼らはそこで、信じがたいほどの非道な行為に及びました。子供を含む16人もの罪のない人々を、その住む家屋ごと焼き払うという虐殺を行ったのです。この残虐行為は、地域社会に深い恐怖と悲しみをもたらしました。

この非人道的な襲撃を受けて、ジャマイカ総督のニコラス・ロウズは激怒しました。彼は直ちに、トリニダードを治めるスペイン人市長に対し、ブラウンとウィンターの身柄引き渡しを公式に要求しました。これは、当時のイギリスとスペインの微妙な関係性の中で、国際的な問題に発展しかねない重大な要求でした。

しかし、トリニダード市長はこの要求を断固として拒否しました。その理由として市長が挙げたのは、ブラウンとウィンターが既にカトリックの洗礼を受け、スペイン国王の正式な臣民となったため、もはやイギリス側に引き渡す義務はない、というものでした。この拒否は、スペイン当局が海賊を自国の利益のために利用していた、あるいは少なくとも黙認していた可能性を示唆しています。

スペインの庇護を受けたウィンターは、その後も1723年頃まで海賊活動を続けていたと考えられています。しかし、それ以降の彼の足取りについては、歴史的な記録がほとんど残されていません。彼の最期がどのようなものであったのか、海賊として生涯を終えたのか、それとも再び姿をくらまし静かに暮らしたのかなど、その後の人生については現在に至るまで明らかになっていません。クリストファー・ウィンターは、恩赦を裏切り、スペインの庇護下で残虐行為を重ねた海賊として、カリブ海の歴史にその名を刻んでいます。

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