クリスマス・イン・ザ・ハート

ボブ・ディランが2009年にリリースした34作目のスタジオアルバム『クリスマス・イン・ザ・ハート』は、彼の音楽キャリアの中でも異彩を放つ作品です。このアルバムは、聖歌、キャロル、そしてクリスマスソングのスタンダードナンバーをボブ・ディラン独自の解釈で歌い上げたクリスマスアルバムです。特筆すべきは、このアルバムの印税が全て、国際的な慈善機関に寄付されるという点です。

アルバムは、ビルボードのホリデイ・アルバム・チャートとフォーク・アルバム・チャートで1位を獲得。ロック・アルバム・チャートでは10位、総合アルバムチャートであるビルボード200では23位にランクインしました。また、全英アルバムチャートでは40位、日本ではオリコンで92位を記録するなど、世界中で大きな反響を呼びました。

収録曲は、誰もが耳にしたことのある定番のクリスマスソングで構成されています。「サンタクロースがやってくる」、「ドゥ・ユー・ヒア・ホワット・アイ・ヒア」、「ウィンター・ワンダーランド」といったお馴染みの曲から、「天には栄え」、「クリスマスを我が家で」、「リトル・ドラマー・ボーイ」など、心温まる楽曲が並びます。また、「クリスマス・ブルース」や「あなたに楽しいクリスマスを」といった少しマイナーな選曲も、ボブ・ディランならではのセンスを感じさせます。「マスト・ビー・サンタ」のようなアップテンポな曲から、「ああベツレヘムよ」のような静かで荘厳な曲まで、様々な雰囲気の曲が収録されており、バラエティ豊かなクリスマスを演出してくれます。

アルバムのパーソネルには、ボブ・ディラン自身の他に、トニー・ガーニエ（ベース）、フィル・アップチャーチ（ギター、マンドリン）、パトリック・ウォーレン（ピアノ、オルガン）、デヴィッド・イダルゴ（アコーディオン、ギター、マンドリン、ヴァイオリン）、ドニー・ヘロン（スティールギター、マンドリン、トランペット、ヴァイオリン）、ジョージ・リセリ（ドラムス）といった実力派ミュージシャンが参加しています。また、アマンダ・バレットやビル・カントスなどを含む混声コーラス隊も、曲に華を添えています。

レコーディングは、ジャック・フロスト（ボブ・ディラン）のプロデュースのもと、カリフォルニア州サンタモニカにあるグルーヴ・マスターズ・スタジオで行われました。エンジニアにはデヴィッド・ビアンコを迎え、丁寧に制作されました。また、アルバムジャケットのアートワークは、ViusalLanguage.comが担当し、レナード・フリードが撮影した内側写真やエドウィン・フォザリンハムが手掛けた裏ジャケットイラストレーションが、アルバムの雰囲気を一層引き立てています。

このアルバムの特筆すべき点は、その収益が全て慈善団体に寄付されるという点です。米国での売上は食糧支援機関フィーディング・アメリカへ、米国以外での売上はWFP国際連合世界食糧計画とイギリスのクライシスに寄付されます。ボブ・ディランは、「飢餓は解決できる問題であり、飢えに苦しむ人々に食べ物を提供し、長期的な解決策を見つける努力を支援するために、私たち一人ひとりができることをしなければならない」と述べており、このアルバムを通じて社会貢献を行っています。

このアルバムのプロモーションビデオとして、前作『ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシン』と同じナッシュ・エジャートン監督による「マスト・ビー・サンタ」のプロモーションビデオが制作されています。

『クリスマス・イン・ザ・ハート』は、単なるクリスマスアルバムという枠を超え、ボブ・ディランの音楽的な才能と社会への貢献意識が融合した、心温まる作品です。クリスマスの雰囲気を盛り上げるだけでなく、聴く人の心を豊かにしてくれるでしょう。

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