クリス・マリン

クリス・マリン：左利きの名シューター、その輝かしい軌跡

クリストファー・ポール・マリン（Christopher Paul Mullin）は、1963年7月30日、ニューヨーク市ブルックリン区で生まれました。セント・ジョンズ大学を経てNBA入りし、ゴールデンステート・ウォリアーズでその才能を開花させた、左利きの名シューターとして知られています。オリンピックでは、1984年のロサンゼルスと1992年のバルセロナで金メダルを獲得。ポジションはスモールフォワード。引退後は母校セント・ジョンズ大学のヘッドコーチを務め、後進の育成にも尽力しました。

2011年には、その輝かしい功績が認められ、アメリカ大学バスケットボール殿堂、そしてバスケットボール界最高峰の栄誉であるネイスミス・メモリアル・バスケットボール殿堂入りを果たしました。

プロ入りまでの道のり

少年時代からバスケットボールに打ち込み、ニューヨーク周辺では有名な選手でした。セント・ジョンズ大学では4年間で平均19.5得点を記録。3年生の時には、マイケル・ジョーダンやパトリック・ユーイングといった名選手たちと共にロサンゼルスオリンピックに出場し、金メダルを獲得。4年生時には、大学バスケットボール界で最も権威のある賞の一つ、ウッデン賞を受賞しました。

NBAでの活躍

1985年のNBAドラフトで、ゴールデンステート・ウォリアーズから全体7位指名を受け、NBAプレーヤーとしてのキャリアをスタートさせました。1年目から平均14得点をマークし、フリースロー成功率は89.6%を記録。これは、新人としてはリーグ史上2番目に高い数字でした。

しかし、プロ入り3年目にはアルコール依存症に苦しみ、ドン・ネルソン監督の勧めで治療プログラムを受け、22試合を欠場。復帰後は平均20得点を超える活躍を見せました。

ウォリアーズは、マリンの入団後も勝率5割前後で推移し、1988年には20勝62敗と大きく負け越しましたが、翌シーズンにミッチ・リッチモンド、さらにティム・ハーダウェイが加入し、1990年代のウォリアーズを支える強力なトリオが形成されました。

ランTMCの時代

1990年代に入ると、マリン、リッチモンド、ハーダウェイの3人は、それぞれのファーストネームの頭文字を取り「ランTMC」と呼ばれ、リーグを席巻しました。3人全員がシーズン平均20得点以上を記録し、ネルソン監督の速攻重視の戦術と相まって、ウォリアーズはリーグ屈指の得点力を誇るチームとなりました。マリン自身も、1989年に平均26.5得点でリーグ5位となり、その後も数シーズンにわたり平均得点でリーグトップ10に入る活躍を見せました。1992年には、オールNBAファーストチームに選出されています。

1992年のバルセロナオリンピックには、ドリームチームの一員として出場し、再び金メダルを獲得しました。

晩年と引退後

ウォリアーズは、1992年に55勝27敗、1994年には50勝32敗と好成績を収めましたが、プレーオフでは勝ち進むことができませんでした。1994-95シーズン序盤にネルソン監督が辞任して以降は、低迷期に入ります。マリン自身も、右親指の靭帯断裂や脚の怪我などで欠場が増え、個人成績も低下していきました。1996-97シーズン終了後、マリンはインディアナ・ペイサーズにトレードされます。

ペイサーズでは、かつてのライバルであり、ドリームチームのメンバーでもあったラリー・バードが監督を務めていました。マリンは、次第に中心選手からベンチを温める役割へと変化していきました。ペイサーズ3年目の1999-2000シーズンには、47試合に出場したものの、先発はわずか2試合。出場時間の減少から、バード監督に対し不満を漏らすこともありました。

ペイサーズがNBAファイナルに進出した1999-2000シーズン終了後、マリンは古巣のゴールデンステート・ウォリアーズに復帰。20試合に出場した後、現役を引退しました。引退後は、スペシャル・アシスタントコーチとしてウォリアーズのフロント入りし、チームに貢献しました。

生涯平均得点は18.2、生涯通算得点は17,911点。生涯通算出場数は986試合で、うちウォリアーズの選手として出場した807試合はチーム史上最多記録です。生涯通算スティール数は1,530で、うちウォリアーズで記録した1,334本もチーム記録となっています。NBAオールスターゲームには5度選出され、1991年と1992年には出場時間がリーグ最多を記録。「ゴッド・ハンド」の異名を持つ名シューターとして、スリーポイントシュートやフリースローの成功率でリーグ上位に名を連ねました。1998年には、フリースロー成功率93.9%でリーグ首位に輝いています。

少年時代に憧れたジョン・ハブリチェックにあやかり、背番号は17番でした。プライベートでは、妻との間に3人の息子がいます。テニスファンとしても知られ、ジョン・マッケンローやブラッド・ギルバートと親交があります。

2012年3月、ゴールデンステート・ウォリアーズは、マリンの背番号17を永久欠番としました。

クリス・マリンは、その卓越したシューティング能力とバスケットボールへの情熱で、多くのファンを魅了し、バスケットボール界に多大な貢献をしたレジェンドとして、永遠に語り継がれるでしょう。

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